組織図から顧客を考える
「マーケット別体制、機能別体制」…組織図から顧客の課題を想像する
2019年12月15日
インターネット広告の営業担当Aさんが、4月に期が変わりお客さんのホームページを見たらニュースリリースに組織変更の記事がありました。
前期の本部構成は、
製造事業本部、流通事業本部、金融事業本部
そして、各本部の下に、
第1営業部、第2営業部、第1技術部、第2技術部、事業推進部
この組織図が次のように変わっていました。
本部構成が、
営業本部、技術本部と2つの本部に変更
営業本部の下に、
製造事業営業部、流通事業営業部、金融事業営業部、事業推進部
技術本部の下に、
第1技術部、第2技術部
Aさんが、お客さんの製造事業営業部長と面談して組織変更について聞いてみると
「組織が変わったからバタバタしているけど、今までとミッションは変わらないから影響ないですよ」
そして、会社に戻りAさんは上司に報告
「組織変更について聞いてみたんですけれど、ミッションは変わらないし影響ないみたいです」
「ただ、今は組織変更でバタバタしているようなので、落ち着くまで訪問しない方が良さそうです」
上司
「そうなんだ、3か月後の7月ぐらいには落ち着いていると思うから、その時に訪 問するように」
本当に影響ないのでしょうか?
3か月後の7月の訪問で大丈夫でしょうか?
ここで考えてみてください。
「何のために組織を変更したのでしょうか?」
「組織変更によって何が変わるのでしょうか?」
たいした目的や意味がなく組織を変更することはありません。
組織変更には相当の負荷がかかります。この負荷をかけてまで組織を変えるには、必ずそれなりの目的や意味があります。
組織体制は、経営課題や戦略に合わせて形作られるものです。
経営層や管理職層が、会社や組織の課題を考え、その課題に対し戦略や対策を考え、そして戦略や対策に合わせて組織を考え決めていくのです。
そのため、経営課題や戦略、対策は組織図に表れるのです。
つまり、
組織図は、経営課題や戦略、対策を考えるのもの。
組織変更は、経営課題や戦略、対策の変化を考えるもの。
上のケースでは、どのような経営課題があり、どのような戦略、対策の変更があったのでしょうか?
組織体制は大別すると「マーケット別体制」「機能別体制」の2つに分かれます。
「マーケット別体制」
一番上の経営層の下に、製造業や流通業などマーケットごとの組織があり、その下に営業や技術、生産など機能ごとの組織が置かれる体制。
「機能別体制」
一番上の経営層の下に、営業や技術、生産など機能ごとの組織があり、その下に製造業や流通業などマーケットごとの組織が置かれる体制。
マーケッ ト別体制は、
マーケット重視の体制であり、営業と技術、生産など機能間の連携を強化してマーケットに向かっていく体制。
その反面、営業や技術、生産といった機能ごとの専門性の強化や営業部門内、技術部門内、生産部門内といった機能別の連携を進めにくくなります。
機能別体制は、
営業や技術、生産といった各機能の専門性や営業部門内、技術部門内、生産部門内といった機能別の連携を重視した体制。
その反面、マーケット志向や営業と技術、技術と生産といった機能間の連携を進めにくくなります。
上の組織変更の場合は、マーケット別体制から機能別体制に変更しています。
この組織変更から、営業または技術、あるいは両方の機能の専門性を強化しないといけないという経営課題があり、営業、技術、それぞれの専門性や連携を強化するという戦略や対策を進めていることが考えられます。
・全社的な売上・利益管理の促進に対し営業管理の改善
・営業部間のノウハウや情報共有の強化
・営業本部内の業務促進として環境や仕組みの改善
・マーケット別に進めていたプロモーションを商品やサービス単位で促進
・技術本部内でマーケット間の技術やノウハウの共有や教育の促進
・技術としての先進性を強化するため研究開発や新技術確立の促進
・技術力の強化として、経験者採用の促進
・ ・・・・・
そして、マーケット別体制から機能別体制に変更したことで新たな課題が発生し、何らか対策を考えているかもしれません。
・営業と技術の間の連携を進めにくくなるため、会議やミーティングの改善
・営業と技術の間で情報を共有しにくくなるため、情報管理や共有のしくみの改善
・ ・・・・・
また、各本部内にあった事業推進部が、営業本部内に統合され置かれています。
事業推進部はどのように変わったのでしょうか?
機能別体制に変わったことにより営業と技術の連携が弱くなるかもしれない・・・
この営業と技術の連携の課題に対して営業本部内に事業推進部が置かれているとすれば、営業の専門性を強化しながら営業本部主体で事業を進めようとしている可能性があります。
つまり、営業の立場が強くなり、営業が技術に合わせるのではなく、技術が営業に合わせて対応しようとしているかもしれません。
また、営業の専門性や連携が問題になっていて、事業推進部がその役割を担っていくかもしれない・・・
すると、営業本部内で営業力強化や連携促進のために何らか対策を考え進めているかましれません。
あるいは、マーケット別に進めていたプロモーションを商品やサービス単位で進めるために事業推進部が統括しプロモーションを見直しているかもしれません。
Aさんは、3か月後の7月に訪問しようとしていますが・・・
もし、「プロモーションを商品やサービス単位で進めるために事業推進部が見直しているかもしれない」と考えて、すぐに訪問し製造事業営業部長から事業推進部の紹介をもらうことができれば、インターネット広告を提案できるかもしれません。
しかし、「ミッションは変わらないし影響ない、組織変更でバタバタしている」と思い7月に訪問したら、プロモーションの企画が固まってしまい提案のチャンスを逃してしまうかもしれません。
組織図から下の①~③を考えることができます。
①.顧客の経営課題や戦略、各組織の戦略やミッション
②.組織間および各 組織内の連携やコミュニケーション、情報共有
③.①②に影響される業務内容や管理方法、人材や各組織内の体制、環境や働き方
しかし、組織変更があったときには少し気にしている人もいますが、営業担当者の多くが、顧客のホームページで組織図を見たときに、体制そのもの、顧客担当者の所属、決裁者や決裁ルートをチェックして終わっています。
顧客の経営課題や戦略、そして各現場の課題や対策を知ることは、営業戦略を考えるために必要なことです。
組織図を見たら、
体制そのもの、顧客担当者の所属、決裁者や決裁ルートをチェックするだけでなく、経営課題や戦略、各現場の課題や対策を想像しましょう。
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