顧客課題を考える方法(潜在課題)
お客さんの潜在課題は商品や技術用語禁止で上位の課題を考える
2022年11月15日
お客さんの要望を聞いてくる御用聞きから潜在課題を考えて提案する営業に変えないといけない。
でも、お客さんの潜在課題ってどうやって考えるんだろう?
ある人材紹介会社の営業担当Aさんが上司Bさんとお客さんの課題について考えていました。
お客さんは広告代理店のセントコーポレーション。
営業担当Aさん
「セントコーポレーションのホームページを見たんですけど、課題がわからなくて・・・」
上司Bさん
「どんな人材が必要かを考えるんだよ」
Aさん
「どんな人材ですか・・・」
「DXを進めている会社が多いからIT技術者が必要なんじゃないですか?」
Bさん
「最近、IT技術者の人材紹介注文が増えてるもんな」
Aさん
「IT技術者は多くの会社で取り合いになっているから、セントコーポレーションも採用に苦労してるんじゃないですか?」
Bさん
「そうだな、訪問した時にIT技術者の採用課題について提案してみろ」
そして、セントコーポレーションの人事担当Cさんを訪問。
営業担当Aさん
「今、DXを進めている会社が多いようなので、御社でもIT技術者が必要なのではと思ったのですが・・・」
「IT技術者は取り合いになっているので採用に苦労している会社も多いようですが、御社はいかがでしょうか?」
人事担当Cさん
「そうですね、うちでもIT技術者の採用を進めていて、現在、人材紹介会社2社にお願いしているんです」
「御社でもいい人がいたら紹介してもらえますか?」
Aさん
「ぜひ、ご協力させてください」
Cさん
「うちで募集している人材は、年齢が20代後半から30代で、IT企業で2年以上経験を積んできた人、必要なスキルは・・・」
Aさん
「わかりました、会社に戻って探してみます」
あれっ、課題を考えていったのにお客さんの要望を聞いてきただけ。
すでに募集していて他社に依頼している注文をもらってきただけ。
課題を考えずに「どのような人材が必要ですか?」と御用聞きをすれば注文をもらえたのではないでしょうか?
訪問する前に課題を考えても意味がない・・・
Aさんは何が良くなかったのでしょうか?
Aさんと上司Bさんの会話から考えてみてください。
この後、他の人材紹介会社の営業担当Dさんがセントコーポレーションの人事担当Cさんを訪問しました。
訪問前、お客さんの課題について上司Eさんに相談。
営業担当Dさん
「DXを進めている会社が多いからIT技術者が必要なんじゃないですか?」
上司Eさん
「いきなり人材や採用の課題を考えるんじゃなくて、お客さんのビジネスを考えるんだよ」
営業担当Dさん
「ビジネスって?」
上司Eさん
「セントコーポレーションはどんなビジネスをやっているの?」
「今後どういうビジネスにしていこうと思っているのかな?」
Dさん
「どんなビジネスですか・・・」
「ホームページを見ると、今までは紙中心の広告ビジネスをやってたみたいなんですが、紙の広告需要が減っているようなので、WEB制作ビジネスに切り替えようとしているみたいです」
上司Eさん
「そうなんだ、たしかに紙の広告需要は減っているみたいだからな」
「紙の広告ビジネスとWEB制作ビジネスって何が違うの?」
Dさん
「うーん・・・」
「WEBは紙と違って問合せページがあるから問合せを管理するシステムが必要になりますよね。セミナーとかやっている会社だと申込管理も必要になるし」
「それと、最近だとSNSでPRする会社が多いからホームページを作るだけじゃなくてSNSとの連携も必要になるかもしれない」
Eさん
「なるほど・・・」
「セントコーポレーショ ンは問合せとか申込管理のシステムもやってるの?」
Dさん
「わからないですけど、紙の広告中心にやってきた会社だからデザインは強いけど、システムは弱いかもしれないですね」
Eさん
「そうしたら問合せとか申込管理のシステムはどうしてるんだろう?」
「それに、SNSとの連携も必要になるだろう?」
Dさん
「問合せとか申込管理のシステム会社やSNSに強い会社と協業してるんじゃないですか?」
Eさん
「そうしたら、デザインだけじゃなくて他のシステム会社と調整できるような、システムがわかってコミュニケーション力の高い人材が必要になるんじゃないか?」
Dさん
「そうですね、今度訪問した時に提案してみます」
そして、Dさんはセントコーポレーションの人事担当Cさんを訪問。
営業担当Dさん
「御社ではWEB制作ビジネスにシフトしているようですけど、紙と違って問合せ管理やセミナーの申込管理システムなども求められますよね?」
人事担当Cさん
「そうだね、うちの会社はシステム開発が弱いから他社と協業して対応しているみたいですよ」
Dさん
「そうですか、システム会社と調整しながら進めていると、デザインだけじゃなくてシステムがわかる人材も必要ですよね」
「それに、コミュニケーション力も必要になるんじゃないですか?」
Cさん
「そうなんです、制作部にシステム会社出身の技術者が1名いて対応しているみたいですよ」
Dさん
「そうなんですか、これからSNSとの連携も増えるでしょうし、今のうちから増やしておいた方がいいんじゃないですか?」
Cさん
「たしかに紙のビジネスと違って、アクセス解析とかマーケティングオートメーションとかいろんなことに対応しないといけないですからね」
「明日、制作部とミーティングがあるから聞いてみますよ」
Dさん
「そうですか、必要でしたら当社で探してみますのでお願いします」
Cさん
「あと、社内のDX推進のためにIT企業で経験を積んだ技術者を募集しているんですが、紹介してもらえませんか?」
Dさん
「わかりました、会社に戻って探してみます」
Aさんは、すでに募集しているDXのためのIT技術者(顕在課題)の注文をもらってきました。
Dさんは、Aさんと同じDXのためのIT技術者(顕在課題)の他に、潜在課題であるシステム会社と調整するための人材の注文ももらってきています。
AさんとDさん、二人とも課題を考えて訪問したのにこの差はなぜ?
Aさんが考えた課題は、
「DXを進めている会社が多いのでIT技術者が必要」・・・ただの一般論。
「IT技術者は多くの会社で取り合いになっているから採用に苦労している 」・・・ただの一般論。
Dさんが考えた課題は、
「セントコーポレーションは、紙中心の広告ビジネスからWEB制作ビジネスに切り替えている」
「WEB制作ビジネスには問合せや申込管理、SNSとの連携が必要」
「デザインは強いけどシステムが弱いから他の会社との協業が必要」
「システム会社と調整できるようなシステムがわかってコミュニケーション力の高い人材が必要」
・・・セントコーポレーションの課題。
Aさんは、いきなり人材や採用の課題を考えています。
その結果、考えた課題は、セントコーポレーションのことではなく”世間一般の人材や採用の課題”。
Dさんは、人材や採用の課題の上の”セントコーポレーションのビジネスの課題”から考えています。
その結果、考えた課題は世間一般の課題でなく、セントコーポレーションにとって「どのような人材が必要か」という課題。
お客さんの人材や採用の課題は、その上のビジネスの課題から生まれてくるものです。
お客さんのビジネスがわからないで考えられることは”世間一般の人材や採用の課題”だけです。
お客さんの課題は、ビジネスの課題(=上位の課題)→人材や採用の課題(=下位の課題)の順番で考えるのです。
(上位の課題=ビジネスの課題)
・紙中心の広告ビジネスからWEB制作ビジネスに切り替えている。
・WEB制作ビジネスには問合せや申込管理、SNSとの連携が必要。
・デザインは強いけどシステムが弱いから他の会社との協業が必要
(下位の課題=人材や採用の課題)
・システム会社と調整できるようなシステムがわかってコミュニケーション力の高い人材が必要。
潜在課題を考えるのであれば上位の課題(ビジネスの課題)から考えましょう。
人材サービスの営業は、
人材や採用の状況ではなく、事業戦略や組織戦略の課題から考える。
ITや設備の営業は、
ITや設備の状況ではなく、経営戦略や事業戦略の課題から考える。
広告や印刷の営業は、
広告や印刷物の状況ではなく、商品戦略や販売戦略の課題から考える。
部品や資材の営業は、
部品や資材の状況ではなく、商品戦略や生産戦略の課題から考える。
しかし、なかなか考えられない。
上位の課題を考えられない原因は、知識や情報の問題もありますが、視点の問題が大きいのです。
人材サービスの営業担当者は、いつも人材や採用のことばかり考えて仕事しています。
自然と人材や採用の視点で考える体質になり、お客さんの事業戦略や組織戦略に目がいかない。
ITや設備の営業担当者は、いつもITや設備のことばかり考えて仕事しています。
自然とITや設備の視点で考える体質になり、お客さんの経営戦略や事業戦略に目がいかない。
視点を変えるということは容易なことではありません。
「お客さんの経営戦略を考えろ、視点を変えろ」と言っても視点というものはしみついた習慣です。なかなか変わらない。
どうしても人材や採 用ばかり考えてしまう。
視点を変えるためには、視点を変えさせるやり方が必要です。
商品や技術など下位の課題について考えることを禁止するぐらい強引なやり方。
下位の課題の言葉(商品や技術に関する言葉)を禁止し、上位の課題しか考えさせない状況を作るぐらい強引なやり方が必要です。
潜在課題は「商品や技術用語禁止」でお客さんのビジネスや上位の課題しか考えられない状況を作り視点を変えさせる必要があるのです。
御用聞きから積極的な提案へと変えるためには、「お客さんの課題はお客さんに聞く」ではなく「お客さんの課題をあらかじめ考える」ことが必要です。
商品や技術用語禁止でお客さんの潜在課題を考えましょう。
※ 商品や技術用語禁止
人材サービスの営業は、人材や採用に関する言葉を禁止
ITや設備の営業は、ITや設備に関する言葉を禁止
広告や印刷の営業は、広告や印刷に関する言葉を禁止
部品や資材の営業は、部品や資材に関する言葉を禁止
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