課題は背景の会話で聞き出す
経営課題の会話が盛り上がれば自然と課題を話してくれる
2026年6月15日
お客さんの中には様々な課題があります。
すでに予算をとって解決しようとしている課題(顕在課題)
優先順位が低いため検討していない課題(優先順位が低い課題)
課題があることはなんとなくわかっているけど明確でないため検討していない課題(明確でない課題)
課題があることに気づいていない課題(気づいていない課題)
「優先順位が低い課題」も「明確でない課題」も「気づいていない課題」も、今は検討していないけれど、検討する可能性のある潜在課題です。
なんとか潜在課題を聞き出して新規案件を獲得したい。
しかし、お客さんが検討していない潜在課題を聞き出すことは難しい。
だって、お客さん自身が気づいていないのですから・・・。
広告会社セントエージェントの営業担当Aさんが設備機器メーカーのリーディング技研を訪問しました。
アポイントを獲得するときに聞いたお客さんの情報は、
・新製品の販売で新規取引先の獲得を進めようとプロモーションに力を入れている。
・ホームページや展示会で紹介し、販売代理店の提案を促進していくため今のところ問題ない。
Aさんは訪問前にリーディング技研のホームページで新製品を見て考えました。
・新製品は今まで人が対応していた加工や組み立て作業を自動で行える生産設備。
・高機能で複雑なので販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいという課題があるのでは。
・販売代理店の説明をサポートするために新製品のWEBサイトが必要なのでは。
そして、上司から「潜在課題は直接聞くのではなく、経営課題の会話から誘導して聞き出すんだよ」とアドバイスされたことを思い出して誘導するシナリオを考えました。
はじめに、新製品の販売で新規取引先を獲得するっていう経営課題の会話から販売代理店の提案を促進していくっていう会話に誘導しよう。
そして、販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいという課題を聞き出そう。
そして、Aさんはリーディング技研を訪問しました。
Aさん
「御社では新製品の販売で新規取引先の獲得を進めているみたいですね」
お客さん
「そうなんです、 製造業では生産設備の自動化を進めていて需要が拡大しているので」
「工場の人手不足が深刻になっているみたいで」
Aさん
「そうなんですか」
「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
お客さん
「まだスタートして3か月なのでこれからですよ」
Aさん
「そうですか」
「今までと違って高機能で複雑な製品なので、販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいと思ったのですが」
お客さん
「販売促進部と営業部が連携してパンフレットと製品説明資料を作成しているので問題ないです」
Aさん
「そうなんですね」
「販売代理店が説明しやすいように、新製品のWEBサイトも作った方が良いと思うんですけど」
お客さん
「まずは、パンフレットと製品説明資料で説明できるように進めていますので」
Aさん
「そうですか、でもWEBサイトもあった方が・・・」
お客さん
「必要ないです」
Aさんは、「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しい」「新製品のWEBサイトが必要」という潜在課題を聞き出すことができませんでした。
なぜ、Aさんは潜在課題を聞き出せなかったのでしょうか?
上司のアドバイスどおりに、経営課題の会話から誘導して聞き出そうとしたのに・・・。
別の日に競合の広告会社ポータル企画の営業担当Bさんがリーディング技研を訪問しました。
Bさんも潜在課題を聞き出そうと・・・
営業担当Bさん
「御社では新製品の販売で新規取引先の獲得を進めているみたいですね」
お客さん
「そうなんです、製造業が生産設備の自動化を進めていて需要が拡大しているので」
「工場の人手不足が深刻になっているみたいで」
Bさん
「たしかに、少子高齢化で働き手の確保は大変みたいですね」
「工場の人手不足って2024年問題もあるようですし」
お客さん
「そうですよ、うちの工場も採用で苦戦 しているみたいです」
Bさん
「そうなんですか、御社の栃木工場でも苦戦しているんですか?」
お客さん
「東京本社と違って若手の採用ができないみたいで」
Bさん
「若い人は東京に出ちゃうんですかね」
「それに工場の仕事はきつい、危険という印象があって避ける人が多いんですか?」
お客さん
「きつい、汚い、危険の3Kっていうんですよ」
「だか ら採用が進まないので、工場の自動化は必要なんです」
Bさん
「そうなんですか」
「そういえば、日経新聞で大手製造業のアドバイス製作所が全工場で自動化を進めるっていう記事が出ていましたね」
お客さん
「アドバイス製作所だけじゃなくて、ほとんどの会社が生産設備の自動化を進めていますよ」
「だから、うちの会社では新製品の販売に力を入れているんです」
Bさん
「そうなんですか、競合の設備機器メーカーも製品の自動化に力を入れているみたいですね」
「でも、御社は競合に比べて販売代理店網が整備されているから有利なんじゃないですか?」
お客さん
「そうなんですよ、うちは全国の設備機器商社をおさえているので、ホームページや展示会での紹介も進めてるけど、やっぱり販売代理店の提案促進が一番重要なんです」
Bさん
「たしかに、地域の製造業をおさえてる販売代理店だと提案も進めやすいですよね」
お客さん
「そうなんですよ、販売代理店は、設備機器だけじゃなくて部品交換とかサプライ品も扱っているから、頻繁に製造業にコンタクトしているので」
Bさん
「設備機器の販売だけじゃないんですね」
「そっか、メンテナンスとかも必要か・・・」
お客さん
「ベアリングの摩耗とかパッキンの劣化で交換とか発生しますからね」
Bさん
「そうしたら新製品も提案しやすいですよね」
お客さん
「ただ、彼らは製品や部品、サプライ品をカタログで紹介する営業ばかりなので、新製品の提案はちゃんとできるのかな・・・」
Bさん
「新製品の提案はちゃんとできるのかなっていうと?」
お客さん
「いや、今までの製品は機能や性能の説明で良かったけど、今回の新製品の場合は費用対効果の提案も必要になると思うんですよ」
Bさん
「そうなんですか、今までのカタログでの製品紹介と違うんですね」
「そうしたら、お客さんの質問に答えられるか不安で提案しづらいかもしれないのですね」
お客さん
「たしかに・・・」
「販売代理店は製品紹介営業ばかりなので費用対効果の提案はできないと思うんですよね」
Bさん
「そうすると、パンフレットと製品説明資料以外に販売代理店をサポートする施策が必要なんじゃないですか?」
お客さん
「サポートする施策って例えば?」
Bさん
「新製品のWEBサイトを作って、コスト削減イメージや費用対効果の事例を載せて、販売代理店が見せながら説明できるようにしたり、FAQのページを設けたり」
お客さん
「なるほど・・・」
Bさん
「よかったらご提案をまとめてきましょうか?」
お客さん
「お願いできます?」
「ご提案をいただけたら販売促進部と営業部に話して検討してみますよ」
Bさん
「わかりました、ご提案をまとめてきます」
Bさんは、潜在課題を聞き出して提案依頼を獲得することができました。
セントエージェントのAさんが「必要ないです」と断られたのに・・・。
なぜ、Aさんは聞き出せずにBさんは聞き出せたのでしょうか?
AさんとBさんの違いを探してみてください。
Aさんは、経営課題の会話から誘導して課題を聞き出そうとしています。
「新製品の販売で新規取引先の獲得を進めているみたいですね」
「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいのではと思ったのですが」
「新製品のWEBサイトも作った方が良いと思うんですけど」
ただ、Aさんは誘導しようとするばかりでお客さんの話しに乗っていません。
お客さんの「自動化を進めていて需要が拡大している」「工場の人手不足が深刻になっている」に対して・・・
「そうなんですか」の一言で終えて、誘導するために質問「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
お客さんの「まだスタートして3か月なのでこれからですよ」に対して・・・
「そうですか」の一言で終えて、誘導するために質問「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいのではと思ったのですが」
Bさんも、経営課題の会話から誘導して課題を聞き出そうとしています。
しかし、Bさんは・・・
お客さんの「東京本社と違って若手の採用ができない」に対して・・・
「若い人は東京に出ちゃうんですかね」「それに工場の仕事はきつい、危険という印象があって避ける人が多いんですか?」
お客さんの「工場の自動化は必要」に対して・・・
「アドバイス製作所も全工場で自動化を進めるっていう記事が出ていました」
お客さんの「設備機器だけじゃなくて部品交換とかサプライ品も扱っている」に対して・・・
「設備機器の販売だけじゃないんですね」「そっか、メンテナンスとかも必要か・・・」
Bさんは、誘導することよりもお客さんの話に乗って会話を盛り上げています。
そして、会話が盛り上がった結果、お客さんが自ら課題を言ってくれています。
「費用対効果の提案も必要になる」
「販売代理店は製品紹介営業ばかりなので費用対効果の提案はできないと思う」
Aさんは、誘導することに一生懸命。
経営課題の会話から販売代理店の会話、そして課題へと誘導することに一生懸命。
Bさんは、会話を盛り上げることに一生懸命。
経営課題の会話や販売代理店の会話を盛り上げることに一生懸命。
“会話は盛り上がれば具体化し自然と落ちていく”
会話は盛り上がると自然と具体的な会話に落ちて いくものです。
経営課題の会話が盛り上がれば、経営課題に対する具体的な現場の状況の会話へ落ちていく。
現場の状況の会話が盛り上がれば、現場の状況に対する具体的な課題の会話へ落ちていく。
課題を聞き出すときに最も大切なことは誘導することよりも、課題の背景(経営課題や現場の状況)の会話を盛り上げることです。
背景の会話が盛り上がれば、誘導しようとしなくても、自然と課題の会話に落ちていき聞き出すことができるのです。
「工場の自動化は必要、新製品の販売で新規取引先の獲得」という経営課題の会話が盛り上がれば、
「販売代理店の提案促進が一番重要」「販売代理店は頻繁に製造業にコンタクトしている」という現場の状況(販売代理店)の会話へ落ちていく。
現場の状況の会話が盛り上がれば、
「費用対効果の提案も必要になる」「販売代理店は製品紹介営業ばかりなので費用対効果の提案はできない」という課題の会話へ落ちていく。
多くの営業現場を見ていると、お客さんの課題を聞き出すときに下の2つのパターンが見受けられます。
「何か課題はありますか?」「・・・・・のような課題はありませんか?」と直接的に質問して課題を聞き出そうとする人。
シナリオを考えて、聞き出すこと、誘導することばかり一生懸命になり、その結果、最も大切な会話を盛り上げることが欠けてしまう人。
お客さんの潜在課題を聞き出すためには、無理に誘導しようとせず、無理に課題を聞き出そうとせずに、経営課題の会話を 盛り上げましょう。
潜在課題を聞き出すためには、聞き出すためのシナリオは必要です。
しかし、最も大切なことは、お客さんと経営課題の会話を楽しむことです。
経営課題の会話を楽しもうとすると盛り上がり、自然と課題を聞き出すことができるのです。
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