顧客の情報は雑談で聞き出す
質問では収集できる情報が限られる
2017年7月14日
「営業方法はすべて顧客の情報から考える」
「顧客のことを知らなければ営業方法は考えられない」
顧客の状況や課題、要望、予算や計画、組織や決裁者、競合、裏事情・・・多くの情報を収集できればより適切な営業方法を考えられます。
しかし、現状では、顧客に聞いても教えてもらえない、そのため営業方法を考えられず苦労し、売上が上がらない。
顧客のことを知らずにできることは、商品説明かお願いぐらい・・・
今回は、顧客の情報を聞き出す方法についてお話ししましょう。
ある日、上司が営業担当Aさんにアドバイスしていました。
「商品紹介だけじゃ売れないから、ちゃんと顧客の課題を聞いた方がいいよ」
「ルートセールスは直行直帰が多くて上司が指導できないっていう会社もあるから聞いてみな」
顧客に訪問して戻ってきたAさんは
「相手が総務の人なので知らないって言われてしまって・・・」
上司
「総務の人じゃ知らないよね、それならしょうがない」
Aさんと顧客のやりとりを聞いてみました。
Aさん
「営業部さんの方で何か課題があれば提案させていただきたいのですが、何かありませんか?」
顧客
「今とのところ営業部から要望がきてないからわからないなあ」
Aさん
「小売り向けの営業の場合、お店を頻繁に訪問するので直行直帰している人が多いようなのですが、御社の営業の人はいかがですか?」
顧客
「うーん、営業部と関わらないから知らないんだけど、どうなのかな・・・」
Aさん
「そうですか、営業の人は外出が多くて上司が指導しにくいというような話って聞いたりしませんか?」
顧客
「聞いたことないな、営業のことはわからないんですよ」
総務の人は本当に営業のことを知らないのでしょうか?
様々な会社で営業の指導をしていてよく次のようなことを言われます。
「相手は総務だから営業部のことを聞いてもわからない」
「相手は情報システムだから製造部のことを聞いてもわからない」
「相手は購買だから技術部のことを聞いてもわからない」
たしかに、詳しいことや正確なことは知らないかもしない・ ・・
ただ、総務や情報システム、購買の人も、
他の部に知り合いもいるでしょうし、飲みに行ったこともあるでしょう。毎月の会議で他の部の状況も聞いているでしょう。同じビルで働いていれば他の部で働いている人たちを見たこともあるでしょう。
入社したばかりならともかく何年か働いていれば、営業が「お店を頻繁に訪問している」ことや「直行直帰が多い」ことぐらいはなんとなく知っているでしょう。
そして「上司が指導しにくい」ことぐらい想像できるでしょう。
では、なぜ「知らない」と言われてしまったのでしょう?
答え・・・相手が知らないのではなく、自分の聞き方が悪い
いつも様々な情報を聞き出してくる営業担当Bさんの場合
Bさん
「先日ちょっと聞いたんですけど、ヤマダ電機さんとの取引ってけっこう大きいみたいですね」
顧客
「昔からメインで取引しているからね。最近は特に増えているみたいですよ」
Bさん
「そうなんですか、ヤマダ電機さんは主要駅周辺にもお店が多いから売れるんですかね?」
「先日、新宿のお店に行ったんですけど、かなり混んでましたよ」
顧客
「そうですか、爆買いも少し落ち着いたとは言われてますけど、やはり新宿は外国のお客さんも多いから売れるのかもしれませんね」
Bさん
「そうすると、御社の営業の人も新宿のお店には頻繁に訪問しているんでしょうね」
「営業所から遠いのに大変ですね」
顧客
「そうらしいですよ。品切れすると競合メーカーにとられちゃうから頻繁にお店に訪問して、品出ししたり追加の商品を持って行ったりしているみたい」
「新宿だけじゃなく主 要駅周辺のお店は頻繁に訪問しているみたいですよ」
Bさん
「そうですよね、郊外のお店はどうなんですかね?」
顧客
「郊外はどうなんだろうね?頻繁かは別として定期的に訪問していると思いますよ。営業車を使っているから」
「ぶつけたりする人もいるから営業車の管理が大変ですよ」
Bさん
「そうなんですか、急いでいると運転が雑になる人も多いですからね」
「でも、主要駅周辺のお店は頻繁に訪問しないといけないし、郊外も営業車で訪問していると、ほとんど会社にいないんじゃないですか?」
顧客
「そうですね、昼間に営業のフロアに行ってもほとんどいないですよ。直行直帰もけっこう多いみたいだし」
「総務は直行直帰がないからうらやましいですよ」
Bさん
「上司の方は営業担当者とのミーティングとか指導ってどうしてるんですかね?」
顧客
「営業管理システムを入れているから営業情報は共有しているようですよ」
「ただ、ミーティングとか指導はどうしてるのかな」
Bさん
「今度、聞いてみてくださいよ。モバイルや会議システムが必要かもしれないので」
顧客
「そうですね、来週に営業課長と営業管理システムの件で打合せするから聞いてみますよ」
Bさんは総務の人から「ヤマダ電機との取引が増えている」「主要駅周辺のお店は頻繁に訪問していて、郊外も定期的に訪問している」「営業は昼間ほとんど出払っている」ことを聞き出していました。
また、聞いていないのに顧客が自分から「営業車を使っている」「直行直帰が多い」「営業情報は営業管理システムで共有している」と話してくれました。
「ミーティングや指導 で苦労している」ことは聞き出せませんでしたが、営業課長に聞いてもらえる流れを作っています。
AさんとBさんは何が違うのでしょうか?
Aさんは、顧客に直接的に質問しています。
Bさんは、顧客との雑談(会話)の中で聞き出しています。
質問という聞き方は、相手に質問を意識させながら返答させてしまいます。
その結果、
・意図(提案したいという意図)を感じさせ、答えて良いか否かを考えさせてしまう
・質問に対し(質問の範囲)で返答しようとさせ、幅広い情報を収集しにくい
・ちゃんと答えないといけないという意識にさせ、「なんとなく」という漠然とした情報、「おそらく」という多少あいまいな情報を収集できない
対して、雑談という聞き方は、意識させずに様々な情報について話をさせることができます。
つまり、相手に質問の意図や範囲、返答の正確性を意識させず自由に話をさせることができ、そのため、深層的な情報、幅広い情報、漠然とした情報を収集することができるのです。
営業では、必要な情報に対して直接的な質問で収集できる情報が限られます。
そのため、雑談の中で聞き出すことが大切です。
そして、雑談で聞き出すためには、雑談のネタになる情報が必要です。事前に顧客のホームページや新聞、自分の経験などからネタになる情報を準備しなければなりません。ネタがなければ雑談はできません。
顧客の情報を聞き出すためには、
①.必要な情報(何を聞き出したいか)を明確にする
②.何について雑談すれば必要な情報を聞き出せるか考える
③.雑談のネタになる情報を準備する
④.顧客と雑談する
営業現場では、①の必要な情報だけ考えて、顧客にいきなり質問しているケースが多く見受けられます。
①~④を行うことは日々仕事に追われている営業にとって面倒なことかもしれません。しかし、顧客の情報がなければ適正な営業方法を考えられません。
逆に顧客の情報があれば適正な方法を考えることができます。その結果、効率的に受注を獲得し売上を上げることができるのです。
・顧客の状況に合わせて説明でき2~3回かかる打合せを1回で済ませることができる
・はじめから適正な提案を作成でき提案や見積の修正が減る
・顧客や社内に対する調整の回数や時間が減る
・トラブルが減る、トラブル対応が短期間で終わる
・受注率が上がり多くの顧客にアプローチしなくても目標を達成できる
楽して売上を上げたいのであれば、面倒がらずにネタを準備して雑談で聞き出しましょう。
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