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新規開拓営業の行動管理

「何を、いつ、どうやってやるか」の3つをその場で決めなければやらなくなる

2025年5月15日

多くの営業担当者が引き合いや既存案件の営業と並行して、新たな取引を獲得するための営業を進めています。


新たな取引先の獲得、取引先の他の部門への営業、・・・

今期の売上以外に会社が長期的に発展していくためにも大切です。


しかし、多くの営業担当者が引き合いや既存案件の営業に追われて、新たな取引を獲得するための営業を後回しにしてしまう。


みなさんはいかがですか?



ある設備機器メーカーの営業部では、期初に営業戦略ミーティングをしていました。


営業部長

「前期は長年取引していたアドバイス工業が工場を海外に移転したため、取引がなくなり売上を落としてしまいました」

「昨今のアメリカの事情を考えると、他の取引先も工場を海外に移転する可能性があります」

「そのため新たな取引先を獲得しないといけないので、今期は新規開拓営業を徹底してください」


営業担当Bさん

「今期も新規顧客へのテレアポですか?」

「展示会に出展しないんですか?」


営業部長

「新規顧客へのテレアポは今期もやってください」

「あと、6月と10月の展示会に出展します」

「来場者のリストは業界別に分けて担当者に配布しますので、各自アプローチしてください」


営業マネージャーCさん

「わかりました」


営業部長

「今月中にテレアポのリストを作成して、来月から新規開拓営業を進めるように」

「マネージャーはチーム会議で進捗を確認してください」



そして、翌月から新規開拓営業をスタートしました。


営業マネージャーCさんのチームでは、

営業担当者がそれぞれ30社をリストアップ。

展示会では多くの来場者と名刺交換ができ、営業担当者一人あたり10社の来場者を担当してアプローチ。



新規開拓営業をスタートしてから1か月が経ち5月末のチーム会議・・・

営業担当者に一人ずつ進捗を聞いたら、ほとんど進んでいない。


営業マネージャーCさん

「なんでリストアップしたのにテレアポをやっていないの?」


営業担当Bさん

「リーディング技研で納品した製品にトラブルがあって対応しなくちゃいけなくて」


Cさん

「1か月間ずっとトラブル対応していたわけじゃないだろう」


Bさん

「見込み案件の対応とか、他のお客さんの定期訪問もあって忙しくて」


Cさん

「リーディング技研のトラブルは落ち着いたんだから、来月は大丈夫だよな?」


Bさん

「来月は展示会もあるから大丈夫です」



2か月が経ち、7月末のチーム会議


営業マネージャーCさん

「なんでリストアップしたのにテレアポをやっていないの?」


営業担当Bさん

「6月は展示会の準備で忙しかったんです」

「パネルやパンフレットの構成とかで販売促進部とのミーティングが多くて」


Cさん

「展示会の来場者にはアプローチできたの?」


Bさん

「3社は電話したんですけど、アポイントが取れなくて」


Cさん

「えっ、10社の来場者を渡したじゃないか」

「他のお客さんはどうしたんだ?展示会が終わってもう2か月近く経つぞ」


Bさん

「忙しくてアプローチできていないです」

「6月下旬に昨年訪問したポータル食品から新製品の問い合わせが入ったので」


Cさん

「ポータル食品は競合のセントテクノロジーと取引しているから無理だろう?」


Bさん

「でも、見積書を提出してほしいって言われて」


Cさん

「見積書を提出したって価格でセントテクノロジーには勝てないだろう」

「うちは一度も取引したことがないし、毎回失注しているから無理だろう」


Bさん

「でも、お客さんから今月中に提出してほしいって言われたので」


Cさん

「それよりも展示会の来場者にアプローチしないと」

「部長も言っていたけど、新たな取引先を獲得しないと来期以降まずいんだよ」


Bさん

「すみません」



なぜ、Bさんはテレアポができなかったのでしょうか?

展示会の来場者にアプローチできなかったのでしょうか?

忙しかっただけでしょうか?



たしかに、Bさんは忙しかったのかもしれません。

リーディング技研のトラブル対応、見込み案件の対応、担当している他のお客さんの定期訪問、展示会のための販売促進部とのミーティング、その他に社内会議や報告書の作成、・・・。


しかし、展示会の来場者にアプローチできないのに、ポータル食品の見積書は作成し提出していました。


「ポータル食品の見積書の作成」は、受注にならない仕事。

「展示会の来場者へのアプローチ」は、新たな取引先を獲得するための仕事。


Bさんにとって大切な「展示会の来場者へのアプローチ」はやっていないのに「ポータル食品の見積書の作成」はやっていました。

・・・なぜ?



仕事の優先順位を決めるために、緊急度と重要度の2軸で考えるフレームがあります。


(優先順位のフレーム)


仕事の緊急度

早急に対応するべきか否かという時間で判断する軸


仕事の重要度

仕事の成果やリスクの視点で重要か否かという仕事の重要度で判断する軸





①.緊急度:高×重要度:高(緊急度、重要度の両方とも高い)

②-1.緊急度:高×重要度:低(緊急度は高いが、重要度は低い)

②-2.緊急度:低×重要度:高(緊急度は低いが、重要度は高い)

③.緊急度:低×重要度:低(緊急度、重要度の両方とも低い)


一番優先順位が高い仕事は「①.緊急度:高×重要度:高」

次に優先順位が高い仕事は「②-1.緊急度:高×重要度:低」と「②-2.緊急度:低×重要度:高(緊急度は低いが、重要度は高い)」

一番優先順位が低い仕事が「③.緊急度:低×重要度:低」


問題なのは「緊急度」の考え方です。

緊急度は、「仕事の目的達成に対して早急に対応するべきか否か」を考えるべきものです。


雑多かつ流動的という特性をもった営業の仕事は目先の仕事に追われやすくなります。

すると、緊急度を「仕事の目的達成に対して早急に対応するべきか否か」よりも「期限が決まっているか否か」で判断してしまいがちです。


営業担当Bさんはどのように判断したのでしょうか?


「ポータル食品の見積書の作成」

お客さんから要求されて期限が決まっている仕事・・・緊急度が高いと判断。

受注にならない仕事・・・重要度が低いと判断。

つまり、「②-1.緊急度:高×重要度:低」


「展示会の来場者へのアプローチ」

期限が決まっていない仕事・・・緊急度が低いと判断。

新たな取引先を獲得するための仕事・・・重要度が高いと判断。

つまり、「②-2.緊急度:低×重要度:高」


同列と考えたため期限が決まっている「ポータル食品の見積書の作成」をやって、期限が決まっていない「展示会の来場者へのアプローチ」を後回しにしてやらなかったのです。


緊急度を「仕事の目的達成に対して早急に対応するべきか否か」で考えて判断したらどうなるでしょうか?


「展示会の来場者へのアプローチ」

目的は来場者からアポイントを獲得して営業活動を進め新たな取引先を獲得すること。


展示会後すぐにアプローチしないとアポイントがとれなくなる。

今期中に新たな取引先を獲得するためには、早めに訪問し提案しないといけない。

・・・緊急度は高い。


「展示会の来場者へのアプローチ」は「②-2.緊急度:低×重要度:高」ではなく、「①.緊急度:高×重要度:高」だったのです。



営業担当Bさんは・・・


引き合いや既存案件の営業、取引先の要求への対応はちゃんとやっていました。

これらは、お客さんから訪問や見積書、提案を要求されているため、期限が決まっていました。


しかし、テレアポや展示会の来場者へのアプローチはやっていませんでした。

「いつまでにテレアポをやらないといけない」という期限が決まっていないから後回しにしたのです。



目先の仕事に追われやすい営業は、緊急度を「期限が決まっているか否か」で判断してしまいがちです。


新規開拓営業のテレアポ、展示会の来場者へのアプローチ、お客さんに要求されていない積極的な提案、リード顧客のフォローや定期訪問、・・・「期限が決まっていない」これらの仕事を緊急度が低いと考えて後回しにしがちです。


そして、これらの仕事は、新たな取引先の獲得や受注獲得など成果が出るまで時間がかかるものが多く、下期や期末にまずいと気づいても手遅れになってしまいがちなのです。



後回しにしないため、手遅れにならないために、すぐに下の3つを決めましょう。


・何をやるか

・いつやるか

・どうやってやるか


展示会が終わったらすぐに決めましょう。

・展示会の来場者のうち○○社と△△社と□□社のテレアポをやる。

・今週水曜日の午後3時から4時にやる。

・展示会で回収したアンケートの情報を確認して1社ずつテレアポトークを考える。



新規開拓営業のテレアポ、展示会の来場者へのアプローチ、お客さんに要求されていない積極的な提案、リード顧客のフォローや定期訪問、・・・会社の成長や発展を考えたら大切な仕事です。


後回しにして手遅れにならないために「何を、いつ、どうやってやるか」をすぐに決めましょう。

「いつまでにやるか」とアバウトに考えるのではなく「いつやるか」と明確に決めましょう。



引き合いや既存案件の営業、取引先の要求への対応は、自ら計画を考えなくてもお客さんからの要求に応えるために行動せざるを得ません。


しかし、新規開拓営業など、お客さんから要求されずに自ら考えて行う積極的な営業を進めるためには「何を、いつ、どうやってやるか」という具体的な計画が必要なのです。


「展示会の来場者にアプローチします」だけでは後回しにしてやらなくなります。


(補足)

「いつ」は日時を決めなければいけません。

「今週中にやる」では他の仕事に追われてやらなくなります。

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