ターゲットを考える方法①
ターゲットは強みやニーズでなく顧客視点の追求による課題の背景から考える
2025年6月15日
新規事業や新規マーケットの拡大、新規開拓営業にはターゲットの選定が大切。
しかし、今までの営業活動や実績からターゲット業界を考えてアプローチしても売上が上がらない。
他の業界にアプローチしたいけど、どのター ゲットが良いかわからない。
取引先や引き合いの営業はできるけど、新規開拓営業はどのターゲットが良いかわからない。
多くの営業担当者がターゲットの選定に悩んでいます。
みなさんはいかがですか?
セントテクノロジーでは、WEB会議システムの営業担当Aさんが期初にターゲットを考えていました。
セントテクノロジーのWEB会議システム
・競合他社のWEB会議システムよりも価格が高い。
・強みは資料共有やコメント機能が充実。
営業担当Aさんは悩んでいました。
・うちのWEB会議システムは価格が高いから大手企業じゃないと売れない。
・WEB会議システムはほとんどの企業がすでに導入している。
・強みである資料共有やコメント機能が必要な会社に絞らないといけない。
そして、Aさんが設定したターゲットは・・・
・従業員数が1000名以上の企業。
・設計図を共有し、図面に書き込みながらミーティングする必要がある製造業。
5月に入り営業活動をスタート。
・製造業の200社をリストアップしてDMを送付しテレアポ。
・製造業の業界団体にもア プローチ。
半年後、20件は訪問できたけれど受注は1件。
製造業以外にアプローチしないと売上目標を達成できない。
そこでAさんはマネージャーのBさんに相談しました。
営業担当Aさん
「製造業200社にアプローチしたし、業界団体にもあたったんですが1件しか受注がとれていないんです」
「他のターゲットにもアプローチしないといけないんですけど、どうしたらいいでしょうか?」
マネージャーBさん
「受注できたのはどこの会社?」
Aさん
「リーディングコーポレーションです」
Bさん
「なんで売れたの?リーディングコーポレーションのニーズは?」
Aさん
「うちのWEB会議システムの文字起こし機能とAI要約機能を評価してくれたんです」
Bさん
「何に使う の?」
Aさん
「営業部と設計部、DX開発部のミーティングで使うらしいです」
「リーディングコーポレーションでは営業部と設計部、DX開発部の連携が重要みたいで」
「だからミーティングの内容を3者で共有するために議事録で使うみたいです」
Bさん
「なるほど、うちのWEB会議システムは、文字起こし機能とAI要約機能でミーティングの情報を正確に共有できることも強みだからな」
Aさん
「たしかに」
Bさん
「ミーティングの議事録でニーズがあるだろう」
「ミーティングの議事録はどの会社でも必要だから全業界がターゲットになるし」
Aさん
「そうですね、ミーティング議事録のニーズにアプローチしてみます」
「どの業界から始めたらいいですか?」
Bさん
「そうだな・・・、今までアプローチできていない小売や流通業あたりから始めてみれば」
Aさん
「わかりました」
その後、Aさんは、小売・流通業で200社をリストアップしてアプローチ。
成果が出なかったので、広告業界と人材業界にもアプローチ。
1年間でDMを送付してテレアポを行った会社は500社。
しかし、受注できたのはリーディングコーポレーションだけ。
はたして「ミーティングの議事録はどの会社でも必要だから全業界がターゲット」は正しかったのでしょうか?
みなさんだったらどのようなターゲットを選びますか?
リーディングコーポレーションのニーズは、
営業部と設計部、DX開発部が情報共有するためのミーティングの議事録に対する文字起こし機能とAI要約機能。
ここで、リーディングコーポレーションのニーズを深掘りしてみましょう。
リーディングコーポレーションは生産設備のメーカーです。
深掘り①
なぜ、営業部と設計部、DX開発部は情報を共有する必要があるのか?
今までお客さんへの提案は生産設備の構成や性能の提案ばかりでした。
しかし、センサーや通信を組み込んだ自動化システムの提案が増加していました。
そのため、今までは営業部と設計部だけで共有すれば良かったのに、自動化システムの開発を担当しているDX開発部を含めた3者での共有が必要になっていたのです。
しかし、営業部と設計部のミーティングにDX開発部が参加できなかったこともあり、また、提案の前にはミーティングで話し合った内容を細かく確認する必要がありました。
深掘り②
なぜ、自動化システムの提案が増加しているのか?
お客さんである自動車メーカーの工場では生産設備の操作や故障検知の自動化を進めていました。
そのため、リーディングコーポレーションでは、生産設備だけを提供する事業から自動で操作や故障検知する仕組みまで総合的に提供 する事業へと変化し高度化していたのです。
深掘り③
なぜ、文字起こし機能やAI要約機能まで必要なのか?
会議資料やメール、チャットでの共有ではダメなのか?
今までは生産設備に関する機械設計の情報を共有するだけでした。
そのため、会議資料やメールでの共有で良かったのです。
しかし、自動化システムの提案では、生産設備に関する機械設計以外に、営業部や設計部にとって難しい通信の回路設計や電力設計、ソフトウェア、セキュリティの情報が必要になり、また、DX開発部が説明した回路設計や電力設計の問題点も必要になりました。
そのため 、ミーティングでDX開発部が話した内容を、提案前に確認できるようにする必要があったのです。
リーディングコーポレーションにおける文字起こし機能とAI要約機能のニーズの理由は・・・
営業部と設計部、DX開発部の3者での情報共有が必要。
その理由は、総合的に提供する事業へと変化し高度化したこと。
そして、自動化システムの提案が増えたことにより、必要な情報が高度で複雑になったこと。
リーディングコーポレーションがセントテクノロジーのWEB会議システムを買ったおおもとの理由は・・・
・総合的に提供する事業へと変化し高度化したこと。
・提案に必要な情報が高度で複雑になったこと。
このおおもとの理由から、
「営業部と設計部、DX開発部の3者による高度で複雑な情報の正確な共有」という課題が生まれ、
この課題から「ミーティングの議事録に対する文字起こし機能とAI要約機能」というニーズが生まれたのです。
商品を買うおおもとの理由(=課題の背景)から課題やニーズが生まれるということは、おおもとの理由が同じ、または似ている業界や企業は、同じ課題やニーズが生まれる可能性が高いということです。
つまり、お客さんが商品を買うおおもとの理由である課題の背景が、ターゲットになりうる要因(=ターゲットの選定要因)なのです 。
・事業の変化・高度化が大きい業界
・必要な情報が高度・複雑な業界や部門
この2つに該当するのはどの業界でしょうか?

IT業界の開発部門
・AIやクラウドなど技術やサービスの変化が速く高度化している。
・システムやネットワーク、セキュリティ、クラウドなど高度で複雑な情報が必要。
AIやクラウドなどの開発で、営業と開発、協力会社がミーティングで高度で複雑な情報について話し合い、共有や確認しながら進める必要があるかもしれません。
建設業界の設計部門
・オフィスビルや商業施設、マンションなどの複合化など変化が速く、設計や整備の高度化が進んでいる。
・デザインや構造設計、空調設備、配管や電気設備など多様かつ複雑な情報が必要。
複合施設の建設で、デザイン設計部、構造設計部、現場、下請け業者がミーティングで、高度で複雑な情報について話し合い、共有や確認しながら進める必要があるかもしれません。
ターゲットは、ニーズから考えるのではなく
「なぜ、そのニーズがあるのか?」という課題と課題の背景から考えましょう。
そのためには、ニーズに対し
「なぜ?なぜ?」で課題の背景である事業や業務の特性、戦略の傾向まで落とし込みましょう。
そして、ターゲットの選定要因である事業や業務の特性、戦略の傾向にあてはまる業界や企業を考えましょう。
ターゲットの選定では「ミーティングの議事録でニーズがある業界」と単純に考えるのではなく、下の5段階で考えてください。
①.商品の強みに対するニーズを考える
文字起こし機能やAI要約機能は何に使えるのか?
「ミーティングの議事録で使える」「ミーティングの議事録でニーズがある」
②.ニーズに対する課題を考える
なぜ、ミーティングの議事録で文字起こし機能とAI要約機能のニーズがあるのか?
「自動化システムの提案の増加に対し、営業部と設計部、DX開発部3者の情報共有が必要」
③.課題の背景を考える
なぜ、自動化システムの提案が増加しているのか?
「自動で操作や故障検知する仕組みまで総合的に提供する事業へと高度化し変化」
④.ターゲットの選定要因を考える
課題の背景からどのような要因のある業界や企業がターゲットになるのか?
※ ターゲットの選定要因は2つ見つけましょう。
「事業の変化・高度化が大きい業界」「必要な情報が高度で複雑な業界や部門」
⑤.ターゲットを選定する
2つのターゲットの選定要因にあてはまる業界や部門を考えましょう。
「IT業界の開発部門」「建設業界の設計部門」「・・・」
ターゲットを商品の強みやニーズという商品の視点で考えている営業の人が多く見受けられます。
しかし、営業活動のターゲットは「お客さんはなぜ買うのか?」という顧客の視点の追求で考えるものです。
商品の強みはどのようなニーズに有効なのか?・・・商品視点。
なぜ、そのニーズがあるのか?お客さんは何を解決したいのか?(課題)・・・顧客視点。
なぜ、お客さんは課題を解決したいのか?解決して何を実現したいのか?(課題の背景)・・・顧客視点。
この顧客視点の追求による課題の背景がターゲットの選定要因になるのです。
ターゲットを考えるときは、お客さんは「なぜ必要?なぜ?なぜ?・・・」を追求して課題の背景を考えましょう。
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