クロージング力の強化②
提案の前には状況把握でなくネガティブファクターを洗い出す
2018年9月15日
受注できると思っていた案件が失注。
「提案ではうちの方が評価されていたのに価格で競合に負けた」「担当者は予算をとれると言っていたのに状況が変わった」「部長が必要だって言っていたのに社長が反対した」
そして「状況が変わったからしょうがない」・・・
そして、上司も「それならしょうがない」で終わらせている・・・
本当に「しょうがない」のでしょうか?
ノートPCの営業担当Aさんが失注した時のことです。
自動車メーカー〇〇社から問い合わせが入り訪問しました。
〇〇社の営業部長との商談から戻ってきて提案を作成するため上司Bさんと打合せ・・・
上司Bさん
「受注の可能性はどう?」
営業担当Aさん
「予算は、すでに100万円とってあるといっているので大丈夫だと思います」
「それに、社長からの指示で検討しているようで、商談相手も営業部長なので決裁者の説得も問題ないと思います」
Bさん
「競合は?」
Aさん
「1社から提案を受けたみたいですけど、価格が高いようなので勝てそうです」
Bさん
「そもそも、なんでノートPCを購入しようとしているの?」
Aさん
「働き方改革の一環で残業削減を進めているみたいなのですが、営業は外出が多くて、帰社してからの事務処理で残業が減らせないみたいで・・・」
「それで、営業社員に配布して外出中に事務処理を終えられるようにしたいということで検討しているようです」
Bさん
「なるほど・・・、それなら検討している理由も明確で、決裁者の社長も予算もOKで、競合にも勝てそうだし、この案件は受注できそうだな」
後日、提案した後で上司Bさんに・・・
Aさん
「今、提案してきたんですけど、受注できると思います」
Bさん
「顧客の反応は良かったの?」
Aさん
「営業部長が「これなら予算も問題ないし大丈夫だと思う。社長と営業マネージャーと検討して進めるよ」と言ってました」
Bさん
「いつごろ決定するの?」
Aさん
「2週間ぐらいで決められると言ってました」
そして、1ヵ月が経ち返事が来ないので電話したところ・・・
顧客の○○社営業部長
「実は経営企画部から、商品企画部や人事部も出張が多いので他の部署も含めて全社で検討しないといけないと言われてしまって」
「働き方改革を担当している経営企画部が検討することになって・・・」
Aさん
「そうなんですか、そうしましたら経営企画部の方をご紹介いただけませんか?」
〇〇社営業部長
「今、経営企画部が予算も含めて検討しているので、少し待ってもらえますか?」
そして、1ヵ月・・・
〇〇社営業部長
「今期は、予算をとっていないので来期に検討することになりました」
上司Bさんにそのことを報告したところ・・・
Bさん
「状況が変わっちゃったからしょうがないな。来期に受注できるようフォローするように」
本当にしょうが なかったのでしょうか?
ここでAさんの問題点を考えてみてください。
・商品企画部や人事部も出張が多くノートPCが必要なことを把握していなかった。
・働き方改革を担当している経営企画部から横やりが入ることを考えていなかった。
・そして「全社で検討する」「経営企画部が担当する」「今期は予算がない」と結論がでる前に手(対策)を打てなかった。
では、Aさんはいつ?どうしていたら?良かったのでしょうか?
はじめの訪問の時に〇〇社の営業部長に「他にノートPCが必要な部署はないか」「働き方改革の一環であれば営業部だけでなく全社の話にならないか」「経営企画部が担当する可能性はないか」を聞けば良かったと思う人がいるかもしれません。
たしかに、結論が出てしまってからでは打つ手がなくなってしまうため事前にチェックし把握しなければならないでしょう。
あらかじめ「経営企画部から横やりが入る可能性」を考えられていたら・・・
「提案前に経営企画部も交えた商談の場を持ち、経営企画部を直接説得」
「緊急性を考え今期は営業部で導入し、来期に商品企画部や人事部に導入するという提案」
などの手を打てたかもしれません。
では、どうしたら事前に考えることができたでしょう?
Aさんは、少なくとも訪問後にBさんと「検討している理由も明確で、決裁者の社長も予算もOKで、競合にも勝てそう」と検討理由や決裁者、予算、競合についてチェックし状況を把握しようとしています。
しかし、「経営企画部のこと」「商品企画部や人事部のこと」については漏れていました。
ただ、様々なことが関係し常に状況が変わる営業活動では、社長、営業部長、経営企画部の関係など顧客組織の内情や関係しそうなこと・・・すべてをチェックし把握するのは容易なことではないでしょう。
実は、はじめの訪問後のチェックに根本的な問題があったのです。
もし、AさんとBさんが「決裁者はどうか?」と決裁者についてチェックし状況を把握するのではなく、「決裁者や関係者で反対したり、横やりを入れそうな人はいないか? 」と問題になりそうなことを探していたら「働き方改革を担当している経営企画部から横やりが入る」可能性に気づいたかもしれません。
受注を獲得するために必要なことは状況を把握することではなく、問題になりそうなこと(ネガティブファクター)を探すことです。
問題がないこと(このケースの検討理由や社長、予算、競合)は、受注の可能性や見込確度を判断するためには必要ですが、受注を獲得するためには対策を考える必要がありません。
つまり、受注を獲得するためにはネガティブファクターを把握することが大切なのです。
あらかじめ問題になりそうなことを把握し、事前に手を打つことで受注できる可能性が高くなるのです。
すると、「決裁者はどうか?」をチェックし状況を把握するのではなく、「検討理由が崩れる要因はないか?」「決裁者や関係者で反対したり、横やりを入れそうな人はいないか?」「予算がとれなくなる要因は何かないか?」「競合に負けている部分はないか?」「他に何か悪影響を及ぼしそうな要因はないか?」を考えることが大切です。
しかし、営業担当Aさんも、上司Bさんも、状況を把握しようという視点で、問題点を探そうという視点になっていません。
つまり、根本的な問題点はチェックするときの視点です。
営業は、受注を獲得したいという思い、会社や上司に良い報告をしたいという気持ちから「都合の良い情報ばかり見ている」「受注の可能性を判断するためにチェックしている」のどちらかになりがちです。
クロージング力の強化には、良い情報は必要ありません。問題になりそうなネガティブファクターを探し、事前に手を打とうとすることで実現します。
受注率を上げるためには、クロージング力を強化するためには、提案する前にネガティブファクターを洗い出しましょう。
より多くのネガティブファクターを見つけることがクロージング力強化の第一歩です。
「決裁者はどう?」ではなく、「決裁者や関係者で横やりを入れそうな人はいない?」から始めましょう。
提案した後でわかっても後の祭りです。
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