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営業戦略の対策

“自社の視点”の営業進捗でなく”顧客の視点”の失注理由から考える

2024年10月15日

営業は思い通りにいかない仕事。

一生懸命に計画を考えても、緻密に情報を集めて戦略を考えてもその通りにいくことはありません。

そのため常に課題と対策を考えることが大切です。


しかし、ちゃんと課題や対策を考えられない・・・

みなさんの会社ではいかがでしょうか?



システム開発会社のセントテクノロジーは昨年にWEB会議システムをリリースしました。

そして、営業マネージャーAさんが戦略を考え、営業担当者5名で営業活動を進めていました。


(セントテクノロジーのWEB会議システム)


一番の特徴は、他のWEB会議システムと比べて1ライセンス(ユーザー数)月500円と価格が安いこと。

そして、一般的なWEB会議システムの機能は網羅している。

資料を画面共有しても参加者のビデオを共有しながら会議ができる。

グループウェアや営業管理システムなど他のシステムと連携できる。


(Aさんが考えた営業戦略)


今期の受注金額目標はリリースしたばかりなので2百万円。


ターゲットについて、

大手企業はすでにWEB会議システムを導入しているし、価格が安いという強みをいかしてWEB会議を導入したいけれど予算を取りにくい中堅~中小規模の企業にアプローチしよう。


1社あたりの受注単価は、

平均10ライセンス(10名のユーザー)で受注したら500円×12か月×10ライセンスで年間6万円。

受注単価が低いから多くのお客さんから受注しないといけない。


アプローチ方法は、

展示会に出展して名刺をたくさん集めてテレアポしよう。

その他にテレアポ代行会社に依頼して新規のアポイントを獲得しよう。


訪問したら、

一通り必要な機能がついていることを説明し強みである価格の安さをアピール。


そして、営業活動をスタート。



半年が経ち9月末・・・


展示会で多くの名刺を獲得でき、テレアポ代行会社のアポイントも含めて30件を訪問。

しかし、受注は6件で受注金額は36万円。


2百万円の目標にぜんぜん足りない。

そこで営業マネージャーAさんは下期の対策を考えました。


(Aさんが考えた対策)


2百万円の目標を達成するためには、あと164万円で28件を受注しないといけない。

上期のペースが30件訪問して受注が6件だから140件訪問しないと。


1社あたりの受注単価を上げないと現実的に無理だろう。


1社あたりのライセンス数を10から20に上げれば受注単価が12万円。

そうすれば、受注件数14件、訪問件数70件で達成、これなら可能性がある。


訪問件数70件を達成するために、

展示会の出展を増やし、テレアポ代行会社も1社増やして2社にしよう。


1社あたりのライセンス数を増やすためにはどうしたらいいだろう?

ターゲット企業の規模を上げて、遠隔会議が必要な多拠点の製造業と商社に絞ろう。


そして、下期の営業活動をスタート。



期末の結果は・・・

70件訪問したけれど受注は少し増えて10件、受注金額が60万円。


あれ???

上期結果のシミュレーションでは、70件訪問すれば14件受注するはずなのに。

それに、ターゲット企業の規模を上げたのに受注単価が上がっていない。


なぜ、上期の結果から対策を考えたのに2百万円の目標を達成できなかったのでしょうか?



営業担当者が断られたお客さんに再訪のアポイントを獲得したので、営業マネージャーAさんは同行して失注理由を聞いてみました。


すると・・・


食品商社のリーディングコーポレーション

・営業部からWEB会議システムを導入してほしいと言われていない。

・体質の古い業界だからお客さんとの打ち合わせは訪問が多い。

・新規取引先の開拓に力を入れていて遠方の取引先が増えてきた。


設備機器メーカーのアドバイスカンパニー

・3年前にWEB会議システムを導入、テレワークを進めているので全社員が使っている。

・今使っているWEB会議システムは資料を画面共有するとビデオが隠れてしまい参加者の顔が見えなくなる。

・WEB会議システムを変えると現場への説明やIDの配布、管理が大変になる。

・変えるだけのメリットがあればよいが価格のメリットしかないと検討したくない。


人材派遣会社のヒューマンポータル

・営業活動をオンラインに切り替えるためWEB会議システムの導入を検討。

・ログインやビデオ背景の変更など他社の方が使いやすかった。

・他のシステムと連携できるという説明があったが、営業現場で必要なのかわからなかった。

・来年に新しく営業拠点を立ち上げ営業社員も2倍に増やす予定。



ここでみなさんに問題です。

営業マネージャーAさんは下期の営業でどのような対策を考えるべきだったでしょうか?



Aさんが考えた対策は、

14件の受注を獲得するために訪問件数70件・・・そのため、展示会の出展を増やして、テレアポ代行会社も2社に増やした。

1社あたりのライセンス数を20ライセンス・・・そのため、ターゲット企業の規模を上げて、多拠点の製造業と商社に絞った。


訪問件数や受注単価など“自分の会社”の営業進捗に関する対策を考えていました。


しかし、Aさんは同行して思いました・・・


リーディングコーポレーションには、今は必要ないって言われたけれど、来年以降さらに遠方の取引先が増えたときの課題を考えさせていませんでした。


遠方の取引先が増えると遠隔会議が必要になると提案していたら、

あるいは総務部だけでなく営業部の人と会えていれば、

受注できる可能性があったのでは。


アドバイスカンパニーには、慣れているから変えられないと言われたけれど、変えさせるメリットを感じさせていませんでした。


機能や価格の説明ばかりでなく、資料を画面共有しながらビデオが見える会議のメリットを説明できていれば、

受注できる可能性があったのでは。


ヒューマンポータルには、使いやすさで他社に負けてしまったけれど、価格が安いとしか理解されていませんでした。


他のシステムと連携できる機能をお客さんの利用シーンに合わせて説明できていれば、

また、営業社員を2倍に増やすことをヒアリングし、他社のWEB会議システムとの将来にかかる費用の差を説明できていれば、

受注できる可能性があったのでは。



Aさんが考えたことは、訪問件数や受注単価など“自分の会社”の営業進捗に関する対策。


“お客さん”が買わない理由に関する対策は考えていたら・・・


・来年以降の課題への提案

今、導入していないお客さんに今の課題を聞いてもダメ、すでに導入して慣れているお客さんに今の課題を聞いてもダメ。

今でなく来年以降の方針と課題をヒアリングして、メリットを提案する営業を徹底しよう。

そのために、訪問したら来年以降の営業戦略と拠点の新設や増員をヒアリング。


・現場部門へのアプローチ

総務部など担当部門ではなく、営業部など現場部門にアプローチしよう。

そのため、出展する展示会を変えよう、それとテレアポ代行会社に依頼するテレアポトークも変えよう。


・利用方法を提案

機能や価格ばかり説明するのではなく、現場の仕事内容をヒアリングして、利用方法を提案しよう。

そのため、訪問したら会議の内容と使っている資料をヒアリング。


この3つの対策を進めていれば、あと3件の受注を獲得できたかもしれません。


あと3件受注できていたら受注件数は13件、目標の14件まであと1件。

受注単価を上げるための対策を考えれば目標達成に近づくことができたでしょう。



営業戦略の対策を考えるときに、”自分の会社”の視点の営業進捗(目に見えるもの)ばかりに見ている営業部が多く見受けられます。


アプローチ件数、訪問件数、提案件数、受注件数、受注単価・・・

すると考える対策は、ターゲット、業務効率や行動量、組織の連携やサポート、販促施策、営業担当者の増員・・・


しかし、売上はひとつ一つの受注の積み上げです。

ひとつ一つを受注できないのは1社1社のお客さんが断っているからであり、そこには理由があります。


今は必要ない、慣れているから変えたくない、メリットを感じない、他社の方が使いやすい・・・


お客さんが断る理由である失注理由(目に見えないもの)を把握し解消することで、ひとつ一つの受注を獲得できるのです。


1社1社のお客さんから受注を獲得できる方法。

「どういう営業をすれば、失注理由を解消しお客さんから受注を獲得できるのか」

商品説明やヒアリング方法、提案内容、クロージング方法・・・


この受注を獲得できる営業方法を考えたあとに、営業進捗から対策を考えることで売上が上がっていくのです。

「売上目標に対し、どうやって行動量や提案件数を改善できるのか」


営業戦略の対策は下の①②③の順番に考えてください。


①.“お客さんの視点”で失注理由の原因を考える

価格のメリットを感じていないのは来期以降の営業社員の増員を考えていないから


②.失注理由から受注を獲得できる営業方法を考える

訪問したら来年以降の営業戦略と拠点の新設や増員をヒアリングして提案


③.受注を獲得できる営業方法に対し”自分の会社の視点”で営業進捗から売上目標を達成する方法を考える

上の②の提案をより多く実践し目標を達成するための訪問件数や受注単価など営業進捗の改善を検討



そもそも、売上の前提となる受注は、自分の会社や営業担当者が決めることはできません。

お客さんが決めるのです。


お客さんが決めることで売上を上げることができる営業の対策は、営業進捗という”自分の会社の視点”からではなく、”お客さんの視点”でお客さんがどうしたら買ってくれるのかを考えることから始めるものです。

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