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相談関係の5つの要件「顧客目線のスタンス」

自分なりの考えや意見に共感する…「事実+想定+考え」を伝える

2017年5月15日

営業現場では「顧客視点」「顧客志向」が重要で「顧客の立場で考えろ」という指導をよく耳にします。

しかし、商談や提案、顧客との交渉ではいつも「売込み」や「自社、自分のことばかり」で顧客の立場で考えているようには見えない・・・


頼られ、相談されるという顧客との相談関係を構築するためには「顧客目線で考えている」というスタンスを伝えることが必要です。


今回は、「顧客目線で考えている」ということを顧客に伝える方法についてお話ししましょう。



まずは3つの会話を見てください。

Aさんが、新サービスを立ち上げプロモーションについて相談しているときの会話です。



<ミーティングでの部下との会話>


Aさん

「新サービスのプロモーションを考えているんだけど・・・」


部下Bさん

「ターゲットはどういう人ですか?」


Aさん

「営業社員や営業マネージャーといった現場で直接営業に関わっている人」


部下Bさん

「そうなんですか、どういうプロモーションをやろうと思っているんですか?」


Aさん

「今やっているセミナーでも告知するけど、他にもやらないといけないと思ってる」

「SNSとかどうかな?」


部下Bさん

「Facebookもいいけど、最近だとインスタグラムで告知している会社も多いですよ」


Aさん

「うちのサービスには合う?」


部下Bさん

「うーん、わからない・・・ちょっと調べてみます」



<友人との会話>


Aさん

「先日話した新サービスを来月スタートさせることになったんだ」


友人Cさん

「そうなんだ、よくスタートまでこぎつけたな」

「ターゲットはどういう人?」


Aさん

「営業社員や営業マネージャーといった現場で直接営業に関わっている人」


友人Cさん

「それならSNSをやった方がいいよ、拡散することで口コミ効果も期待できるし」


Aさん

「ターゲットが営業社員なんだけど合うかな?」


友人Cさん

「BtoCサービスでしょ?SNSはやらないと」



<広告会社の営業担当者との会話>


営業Dさん

「新サービスのプロモーションを検討されているとのことでしたが?」


Aさん

「そうなんです。今のセミナーだけだと足りないので広く告知できるサービスを探していて・・・」


営業Dさん

「ターゲットはどういう人ですか?」


Aさん

「営業社員や営業マネージャーといった現場で直接営業に関わっている人」


営業Dさん

「営業社員がターゲットだと当社のサービスは合うと思いますよ」

「若年層の社会人の会員が多いので営業社員も多いし、御社のプロモーションに有効だと思います」



問題・・・

この3つの会話の中でこの後Aさんが悩んだ時に相談したいと思う人は誰でしょう?


・SNSについて調べてくれる部下Bさん

・BtoCサービスに有効なSNSを勧める友人Cさん

・ターゲットに合っているサービスを提案する営業Dさん



相談関係を構築するための要件の1つは顧客目線のスタンスです。

つまり、相談関係を構築するためには顧客の立場で考えるというスタンスが必要なのです。


この顧客の立場で考えるというスタンスを相手に印象付けるためには、「顧客の立場」で考えた「自分なり」の「考え(意見)」が必要です。


この点を踏まえて3つの会話を振返ってみましょう。



部下Bさんの場合

状況に対する質問中心で「SNSはどう?」と聞かれたときも「わからない」と考えを言っていません。

一見「最近だとインスタグラムで告知している会社も多い」と考えを言っているように見えますが、これは単なる事実や知っている情報を伝えただけ。


友人Cさんの場合

「それならSNSをやった方がいいよ、拡散することで口コミ効果も期待できるし」「BtoCサービスでしょ?SNSはやらないと」と考えを言っているように見えますが、これはBtoCの場合という一般論であり「顧客の立場」での考えではありません。


営業Dさんの場合

「当社のサービスは合う」「御社のプロモーションに有効」と考えを言っているように見えますが、「営業社員がターゲット」という表面的な顧客の状況に対しての意見であり「顧客の立場」が表面的です。そのため、せっかく提案していても売り込みに見えてしまっています。



答え・・・いない



「顧客の立場」で考えた「自分なり」の「考え(意見)」を伝えるためには、必要なものが3つあります。


「顧客の事実(状況)」+「事実に対する想定」+「考え」

つまり、顧客から聞いた状況(顧客の事実)に対する考えでなく、顧客から聞いた状況に対して、実態や本質を想定し、その実態や本質に対する考えを伝える。



では、次の会話を見てください。


<別の広告会社の営業担当者との会話>


営業Eさん

「新サービスのプロモーションを検討されているとのことでしたが?」


Aさん

「そうなんです。今のセミナーだけだと足りないので広く告知できるサービスを探していて・・・」


営業Eさん

「ターゲットはどういう人ですか?」


Aさん

「営業社員や営業マネージャーといった現場で直接営業に関わっている人」


営業Eさん

「営業社員がターゲットだと難しいですね、業界ごとに見ている媒体も全然違いますから」


Aさん

「そうなんですよ、だからどういう媒体が効果あるのか難しくてね」


営業Eさん

「業界は絞っていないんですか?」


Aさん

「法人営業がターゲットなんです」


営業Eさん

「たしかに、組織や予算情報の管理に強みがあるようなので法人営業向きですよね」

「ただ、法人営業は個人営業よりも上司や他部門と相談しているので、メディアとか社外からの情報収集が少ないんですよね」


Aさん

「たしかに、そうですよね。うちの営業も新聞すら読んでいない人が多いし・・・」


営業Eさん

「営業社員個人にアプローチするのは難しいんじゃないですか?」

「それよりも、営業企画とか営業部にアプローチした方が良いのでは?」



営業Eさんは、

「法人営業がターゲット」という顧客から聞いた情報に対して、

「組織や予算情報の管理に強みがある」とサービスの実態や「個人営業よりも上司や他部門と相談している」「メディアとか社外からの情報収集が少ない」と法人営業の実態について想定し伝え、

その想定に対して「営業企画とか営業部にアプローチした方が良い」と自分なりの考えを伝えています。


つまり、顧客から聞いた情報に対し自分なりに実態や本質を想定し伝えているため、その後の考えが一般論や表面的でなく自分なりのものになっています。



人は、自分のことを真剣に考え、他の人と違う(一般論でない)自分なりの考えに共感するのです。

そして、その真剣に考える姿勢や自分なりの考えに頼りたい、相談したいと思うのです。


しかし、営業現場では、

「ターゲットはどういう人ですか?」と質問するばかりで考え、意見がない

「法人営業がターゲット」という顧客の情報を聞き「そうなんですね」「大変ですね」など共感するばかり

「法人営業がターゲット」と聞いただけで「それならSNSがいい」「うちのサービスが有効」と考えを伝える

といったケースが多く見受けられます。


・質問するばかり

・相手の話に共感するだけ

・調べた情報や知っている情報、一般論や表面的な意見を伝えるばかり

では、顧客目線のスタンスが相手には伝わらないのです。



自分の考えや意見を伝えられない原因は大きく3つあります。


1つ目は、相手のことを知らない。そのため相手について考えられない。

2つ目は、相手のことは知っていても自分のことばかり考えている。

3つ目は、考えや意見を言った時に、間違えている、否定されることが怖い。


3つ目の間違えている、否定されることが怖いという人は、考えや意見を伝える前に「事実に対する想定(実態や本質の想定)」を具体的に考え伝えてください。

実態や本質の想定は、考えや意見に対する根拠であり、前振りになるものです。この前振りの後に意見や考えを伝えると相手から単純に否定されにくく、反感を持たれにくくなり、考えや意見を言いやすくなります。



営業にとって顧客目線のスタンスを伝える(理解される)ことは大切です。


ぜひ、顧客の実態や本質を考え、実態や本質に対し自分なりの考えをまとめ、伝えてみてください。


顧客にとって「自分の立場で考えてくれる人」になり、頼られ、相談される関係を構築しやすくなります。

顧客との関係が変わると、商談や提案だけでなくトラブル対応なども進めやすくなります。

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