相談関係の5つの要件「悩みの共感」
顧客の悩みや背景の知識と会話が頼られる関係を構築する
2017年1月2日
顧客との関係について聞いてみると「私は顧客との関係を作るのが得意です」「A社とは作れているけれど、B社は難しい」・・・
しかし、「顧客との関係を作るのが得意」と言っている人も、「A社とは作れているけれど」 と言っている人も提案を理解してもらえない、トラブル対応に苦労している・・・
このような状況が多く見受けられます。
顧客と関係が作れているのになぜでしょう?
課題解決型営業では、顧客と関係が作れているか否かよりもどのような関係を作っているかが重要です。
営業における顧客との関係は大別すると2つあります。
「使われる関係」と「頼られる関係」
課題解決型営業は、顧客に悩みを言ってもらい、悩みに対する解決策を考えアドバイス(提案)し課題解決へと導く営業です。
そのため、顧客に使われる、面倒を見てもらうという上下の関係 でなく、対等な頼られる関係、つまり相談関係が必要です。
では、顧客に頼られる相談関係とはどのような関係でしょうか?
少し考えてみましょう。
たとえば、仕事がうまくいかず転職しようか悩んでいました。
みなさんは、どちらの人が相談しやすいでしょうか?
Aさん
知人ではない、多くの仕事を紹介してくれる人材紹介会社の転職カウンセラー
Bさん
自分のキャリアや性格、家庭環境のことを知っている、理解してくれる友人
多くの人は、
Bさんに相談して、転職しようと決めてからAさんに相談するでしょう。
なぜ、はじめからAさんに相談しないのでしょうか?
Aさんは、転職した人を多く見てきた転職の専門家なのに・・・
BさんよりもAさんの方が転職には詳しいのに・・・
ここでAさんとBさんの違いを考えてみましよう。
Aさん
・転職に対して仕事の紹介 をできる
・転職に対して専門知識があり実行可能なアドバイスをできる
・相談者のキャリアや性格、家庭環境を知らない
Bさん
・転職に対し仕事の紹介をできない
・転職に対し専門知識がなく実行可能なアドバイスをできない
・相談者のキャリアや性格、家庭環境を知っている
AさんにあってBさんにないものは
「仕事の紹介」、「専門知識、実行可能なアドバイス」
BさんにあってAさんにないものは
「相談 者のキャリアや性格、家庭環境の知識」
「仕事の紹介」は転職の解決策であり、「専門知識、実行可能なアドバイス」が解決策に関する知識と提案です。そして「相談者のキャリアや性格、家庭環境の知識」は、転職という課題の原因とその背景に関する知識です。
つまり、AさんにあってBさんにないものは、解決策と解決策に関する専門知識や提案であり、BさんにあってAさんにないものは、課題の原因やその背景に関する知識です。
Bさんは、解決策と解決策に関する専門知識を持っていないものの、今までのキャリアや現在の仕事内容や環境、仕事に対する考え方や性格、仕事をするうえで関係する家庭の状況などを知っています。これは、転職に悩む理由を理解できるということです。
つまり、Bさんは悩みの共感(課題の理解)ができるということです。
転職に悩んでいるとき(=課題が漠然としているとき、解決策が明確でないとき)は、解決策に関する専門知識や解決策を持っている人よりも、悩みを理解できる人の方が相談しやすいのです。
では、営業活動ではどうでしょうか?
たとえば、スマートフォンの営業の場合、
顧客がスマートフォンの購入しようか悩んでいるときは、
利害関係がなく、スマートフォンの購入を考える原因とその背景を知っている、理解できる人に相談しやすく、
スマートフォンを購入することを決めたときにスマートフォンに関する専門知識とスマートフォンを提供できる人に相談・・・。
この「スマートフォンの購入を考える原因とその背景」とは、
・仕事が新規開拓営業中心で外出が多く、メールでの顧客対応に苦労している(Lower Situation)
・会社が早期にシェアを確保したいため新開拓営業を強化(Structure)
・市場が拡大しているが、競争が激しい(Environment)
です。
※「顧客課題を考える方法(ESLPIプロセス)」参照
「スマートフォンに関する専門知識」とは、スマートフォンの機能や料金などの知識です。
顧客にはじめに相談されるのは、「機能や料金」といったスマートフォンに関する専門知識を持っている営業ではなく、「顧客対応に苦労」「新規開拓営業を強化 」「競争が激しい」といった課題に関する原因やその背景の知識(情報)を持ち、理解できる営業です。
つまり、課題解決型営業に必要な顧客との相談関係を作るためには、顧客課題の理解(悩みの共感)が必要であり、そのためには、課題の原因やその背景を事前に調べ知識・情報として準備し、その原因や背景の会話をすることで「課題を理解(悩みを共感)できる人」という印象を与える必要があるのです。
しかし、スマートフォンの知識、システムの知識、設備の知識、部品や素材の知識、広告の知識、人材や採用の知識といった自分の専門性の知識で顧客との関係を作ろうとし、商品やその専門分野の会話ばかりで、顧客の悩みやその原因、背景について調べ、考え、会話をしている営業が少ない。
その結果、頼られる関係でなく、使われる関係になってしまっています。
この相談関係は営業活 動において提案を理解させやすくする、トラブル対応や交渉をしやするなど、営業活動を大きく変えることができます。
みなさんは、顧客との会話で「商品の機能や料金の話」、「課題の原因やその背景の話」のどちらが多いでしょうか?
「課題の原因やその背景の話」による悩みの共感が相談関係を作るのです。
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