受け身体質を改善する提案書
自ら課題と解決策を考え提案させることで積極的な営業へ変革する
2024年4月15日
「うちの営業社員は受け身で積極的に営業しない」
多くの会社と関わっているとこの”体質”に関する相談が多い。
お客さんが要望を言 ってくれたら対応するけれど・・・
今の取引の継続に対しては営業するけれど・・・
積極的に新商品を提案しない。
積極的に課題やニーズを聞き出そうとしない。
積極的に紹介をもらって取引を拡大しようとしない。
みなさんの会社ではいかがでしょうか?
産業用カメラを販売しているセント商事では月初に営業会議をしていました。
営業部長は営業社員全員に、
「うちの営業社 員は受け身で積極的に案件を獲得しようとしない」
「取引先の工場の再編が進んでいるから今の取引ばかりだと売上が下がってしまう」
「もっと積極的に案件を獲得しないと」
「そのため今月は次の2点を徹底するように」
「1点目は、取引を拡大するため既存顧客に対し他の工場の紹介を獲得するように」
「2点目は、今期リリースした新商品の工場向けカメラを紹介するように」
新商品の工場向けカメラは・・・
競合他社の工場向けカメラより価格は高いけれど高画質。
工場内に設置して作業者の行動や表情、細かい作業などを映像化できる。
そのため、作業者の疲労や健康を チェックしたり、作業方法を映像でマニュアル化できる。
セント商事の営業担当Aさんは工作機械メーカーであるリーディングテクノロジーの埼玉工場を訪問しました。
営業担当Aさん
「新商品の工場向けカメラをご紹介させていただきたいのですが」
「このカメラはアメリカのアドバイス社製で、アメリカではすでに10万台販売されているんです」
「10万台も売れている理由は・・・
画素数が・・・で高画質であるため工場内の作業者の表情や細かい作業まで撮影できて、映像データの伝送スピードが速く・・・」
「そのため、作業者の健康管理や熟練工の作業を映像化することで若手作業者の教育で・・・」
と一通り新商品を説明。
そして、Aさんは
「埼玉工場さんでもお役に立つと思うのですが、いかがでしょうか?」
するとリーディングテクノロジーの担当者Bさんは
「健康管理は毎日朝礼で確認しているし、熟練工の技術伝承は重要なので若手作業者の教育も力を入れているから問題ないですよ」
Aさん
「そうですか、埼玉工場さんでは健康管理も若手作業者への教育も進んでいるんですね」
Bさん
「うちの会社も作業者の高齢化が進んでいたので10年前から若手作業者の採用と教育は強化しているんですよ」
Aさん
「そうですか」
「よろしければ、御社の福島工場さんにもお話ししたいのですがご紹介いただけないでしょうか?」
Bさん
「一応、聞いてみますけど、福島工場も間に合っていると思いますよ」
Aさんは会社に戻り営業部長に報告
「積極的に案件を獲得しようとしたんですけれど・・・
新商品の工場向けカメラを紹介したんですけど必要なかったようで、あと、福島工場の紹介をもらおうとしたんですがダメでした」
ここで問題です。
Aさんが、新商品の工場向けカメラを紹介したこと、福島工場の紹介をもらおうとしたこと
これらは積極的な営業なのでしょうか?
実は、営業部長の指導には大きな問題が2つありました。
1つ目の問題として・・・
積極的とは、物事を自らの意思で自ら進んで行うこと。
・・・物事を自ら考え、自ら行動すること。
新商品の工場向けカメラの紹介はお客さんから要求されたことではありませんが・・・
また、福島工場の紹介もお客さんに自らお願いしていますが・・・
いずれも、自ら考えてやろうとしたことではなく、営業部長に指示されてやったこと。
そして、指示された新商品を紹介し、お客さんに「問題ないですよ」と言われたらあきらめてしまいました。
積極的に課題を聞き出そうとか、説得しようとせずに・・・。
お客さんに要求されてやったことでなくても、上司に指示されてやったことは積極的ではありません。
営業活動において積極的とは、
売上を上げるために、どこに、どのようなニーズがあるかを自ら考えて、自ら行動すること。
積極的な営業の基本は、
自らお客さんの中のターゲット(どこにニーズがあるか)を考えること。
自らお客さんの課題と解決策(提案)を考えること。
そして、考えた課題と解決策(提案)に対し自ら行動すること。
つまり、積極的な営業の基本は、自ら提案を考え提案すること。
積極的な営業を促進するためには、
「他の工場の紹介を獲得するように」「新商品を紹介するように」と指示し行動させるのではなく、
「どの工場にニーズがあるのか」「どのような課題があるのか」「どのような解決策(提案)が必要なのか」を考えさせて行動させなければなりません。
2つ目の問題として・・・
受け身や積極的というのは体質です。
多くの会社で営業部長やマネージャーが積極的に営業させようと以下のような指導をしています。
「やれ」という指示、一時の指導、マインドに訴えかける指導や評価制度の改善。
みなさんの会社ではいかがでしょうか?
しかし、体質は長い間の環境や経験で凝り固まったものです。
営業が受け身になっている原因は、長い間、御用聞きや商品紹介ばかりやらせていた、また御用聞きや商品紹介ばかりの営業で甘んじていた環境や経験です。
この長い間の環境や経験で凝り固まった受け身体質は指示や指導では改善できません、マインドに訴えかけても変わりません。
体質を改善するためには明確かつ適正な型と継続が必要です。
適正な言動や行動の型とその型の継続による適正な言動や行動の継続。
猫背などの癖を直す方法と同じです。
積極的な営業に改善するためには積極的な営業に対する適正かつ明確な型とその継続が必要です。
積極的な営業の基本である自ら提案を考え提案させるための明確な型・・・これが提案書。
頭で考えるだけでなく提案書の型に落とし込ませることで明確化させることができます。
そして、明確化させることで行動を促進することができます。
提案書の型により、
自らお客さんの課題と解決策を考えさせ、提案書を作成させ、
そして、自ら提案書を持っていける相手(どこに提案できるか)を考えさせ、
そして、自ら提案させる。
これを継続させることで営業の体質も受け身から徐々に積極的に変わっていきます。
積極的な営業に変えたいのであれば、
「他の工場の紹介を獲得するように」「新商品を紹介するように」と指示するのではなく・・・
お客さんであるリーディングテクノロジーの中にどのような課題があるのか?
・リーディングテクノロジーの工作機械はどのような製品か?
・製品はどのように変わっていくのか?高度化するのか?
・製造過程の中で技術伝承が必要なところはどこか?
・若手作業者の教育のどこに問題があるのか?
そして、工場向けカメラでどのような解決策が考えられるのか?
・カメラで熟練工の作業を映像化することで実現できることは何か?
・解決策によってリーディングテクノロジーにはどのようなメリットがあるのか?
この課題と解決策を考えさせ、提案書を作らせ、提案書を持っていかせて提案させる。
積極的な営業に変えるためにはこれを継続させる必要があるのです。
①.お客さんの課題と解決策(提案)を考えさせる。
※「顧客課題を考える方法(ESLPIプロセス)」「顧客にとっての商品の価値」参照
②.課題と解決策に対し提案書を作らせる。
※「顧客に検討させる提案書」参照
③.提案書を持っていかせ提案させる。
④.①~③を継続させることで積極的な営業の体質を定着させる。
自らお客さんの課題と解決策(提案)を考えなければ受け身である御用聞き営業しかできません。
また、積極的な行動には、自ら考え自ら行動するための”意思”が必要です。
自らお客さんの課題や解決策を一生懸命に考えていると、お客さんに対し「・・・が問題」「・・・すべき」という意思が生まれてきます。
課題と解決策(提案)を考えることにより生まれる「・・・が問題」「・・・すべき」というお客さんに対する意思は、積極的な営業を加速させることができます。
体質を変えることは容易なことではありません。
長い間の環境や経験で凝り固まった受け身体質を変えることは大変なことです。
しかし、課題解決型営業や戦略営業は、自ら考え、自ら行動するという営業であり、積極的な体質が前提です。
「やれ」という指示、一時の指導、マインドに訴えかける指導や評価制度の改善ではなく・・・
課題と解決策を考えさせ、提案書を作らせ、提案させましょう。
部下に対し「お客さんに対して興味ない、お客さんの課題や解決策を考えない」と悩んでいる営業部長やマネージャーが多いのですが、根本的な問題は売上や商品のことばかりで、お客さんの課題や解決策を考えさせる時間が少ないことです。
そのため、売上や商品の視点ばかりになりお客さんの視点で考えられなくなっているのです。
課題解決型営業や戦略営業にとって、お客さんの課題や解決策を考える時間は大切です。
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