営業社員のモチベーション
営業を頑張る価値は評価でなく身につく力と将来の自分
2020年3月15日
今日の営業は、
目標を達成するためにあきらめず対策や方法を考えなくてはならない
今までの営業から戦略営業や課題解決型営業へ変えなくてはならない
従来 の商品でなく新しい商品を売り、新しい領域を広げないといけない
そのためには、自主的に考え積極的に取り組もうという姿勢、力をつけよう成長しようという意欲が必要です。
つまり、モチベーションが重要な仕事。
しかし、営業責任者から聞こえてくるのは、
「うちの営業は受け身、自分で考えない」「新しいことに積極的に取り組まない」「勉強しない、改善しようとしない」
その結果、
売上が伸びない、新商品が売れない、新しい領域を拡大できない・・・、そして、辞めてしまう。
30年以上経験を積んだ営業責任者は
「昔はもっと自分で工夫したのに」「もっと売上を上げるために必死だったのに」とぼやいている・・・
ある会社で営業企画担当のAさんが、営業社員のモチベーションを上げようと取り組んでいました。
①.評価と給与・昇進体系の改善
売上目標に対する意識を持たせるために、評価制度を変えて、売上目標を達成すると昇給や昇進しやすくした。
②.働く環境の改善
残業が多いという不満を解消するために、モバイルを配布して外出時に仕事ができるようにした。
③.仕事量 の改善
事務作業が多いという不満を解消するために、アシスタントをつけて事務作業を減らして営業活動に専念できるようにした。
そして、1年が経過
「評価制度を変えたって、そもそも目標が高すぎる」「外出時に仕事ができるのはいいけど、相談しにくくなった」「事務作業は減っても、よけい社内調整や根回しが必要になって大変」
そして、今年も営業社員が辞めてしまった・・・
ここで問題です。
この①②③の取り組みは何なのでしょうか?
本当にモチベーションを上げるための取り組みなのでしょうか?
この取り組みを企画し推進したAさんは
「営業社員の要求を聞いて一生懸命に取り組んだのに・・・」
営業社員の要求を聞いて一生懸命に取り組んだのになぜ変わらない?
「うちの営業は何をやっても愚痴ばかりで変わらない」と推進したAさんのモチベーションまで下がってしまいました。
答え
これは、モチベーションを上げるための取り組みではなく、モチベーションを下げないための取り組み。
Aさんは、営業社員の不満を聞いて解消しようとしています。つまり営業社員のモチベーションが下がる要因を解消しようとしているのです。
そして、モチベーションを上げるための取り組みをしていません。
一見、①の昇給しやすくするということはモチベーションを上げるための取り組みのように見えますが、これもモチベーションを下げないための取り組みです。
終身雇用の時代であれば、頑張って成果を上げ目標を達成すると出世し権限も給与も上がるという夢や将来を想像しやすく、モチベーションを上げることができました。
では、今日の営業社員の夢や将来は?
雇用が流動化し、自分で自由に将来を考えることができ、将来の選択肢も多い今日では、「将来ずっとこの会社にいるかどうかわからない、出世よりも自分のやりがいにこだわる」
自分で自由に将来を考えることができ、将来の選択肢も多いということは、良いことのように思えますが、反面、自分で探さないといけない、夢を見つけにくくなっているということです。
「将来ずっとこの会社にいるかどうかわからない、出世よりも自分のやりがいにこだわる」という今日の営業社員にとって、昇給は短期的なものであり、将来を考える材料になりにくいのです。
では、営業社員のモチベーションを上げるためにはどうしたらよいのでしょうか?
まず「営業という仕事が何なのか?」を考えなくてはなりません。
当たり前のことですが、モチベーションを上げ る対象は営業という仕事であり、営業という仕事にやりがいを持たせる必要があります。
その営業という仕事が何なのか理解していなければ、やりがいを持たせることもできません。
今日の営業の仕事内容や特性を並べてみると
・戦略や計画を考える
・顧客の課題と解決策を考える
・顧客の課題やニーズを発掘する
・提案を作成しプレゼンする
・予算や決裁者を調整・交渉する
・対人関係で成り立つ仕事
・売上・利益目標を追う仕事
・流動的かつ雑多な仕事
・思いどおりにいかない仕事
そして、この仕事を一生懸命に取り組むことで身につく力は
・顧客・自社・競合分析力や戦略・計画策定力
・知識・情報収集力や課題・ニーズ(商品)分析力
・説明・ヒアリング力やコミュニケーション・関係構築力
・体系的表現力や説得力
・情報収集~顧客分析力や調整・交渉力
・人間性(誠実さ、マナー、モラル)や人脈
・目標意識、努力、あきらめない心や売上、収支計画・管理力
・仕事の整理、業務管理力、課題・対策考察力(PDCA力)
いきなりトラブル対応や引き合いが入ったりする流動的な仕事で、受注を獲得できると思っても予想外なことが起きて思い通りにいかない仕事です。
流動的で思いどおりにいかない仕事を一生懸命に取り組んでいると、仕事を効率的に組み立てる力や課題と対策を考える力が身につくのです。
これらの力は何か?
事業や商品を企画する力、戦略や計画を策定する力、売上や利益を考える力、周囲を調整し巻き込む力、苦難を乗り越える力・・・ビジネスの総合力です。
営業という仕事を頑張ることでビジネスの総合力が身につき、これらの力を身につけた将来が今日の営業を頑張る価値なのです。
マネジメントや後輩の指導や教育をすることも
世の中に受け入れられる商品を企画することも
コンサルタントになることも
事業を立ち上げることも、会社を設立し独立することも
このビジネスの総合力を身につければ、すべてできるようになるのです。
そのためには「営業はどのような仕事なのか?」「営業を頑張る価値は何なのか?」を教え、そして「営業社員自身の夢や将来は?」を考えさせなくてはなりません。
「営業はどのような仕事なのか?」「営業を頑張る価値は何なのか?」「営業社員自身の夢や将来は?」が営業という仕事の本質的なやりがいであり、モチベーションを上げるものなのです。
営業という仕事の本質を見ずに、安易に評価や給与、環境や仕事量を変えようとしている会社が多く見受けられます。
しかし、モチベーションを上げる取り組みがあるから、モチベーションを下げない取り組みも生きてくるのです。
当たり前です。いくら不満を解消してもやりがいを感じなければモチベーションは上がりません。
今期の売上ばかり考えさせるのでなく、もっと将来を考えさせましょう。
評価や給与体系、環境や仕事量を改善する前に、営業という仕事の価値を考えましょう。
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