競合に勝ち受注できる案件獲得方法
お客さんが課題を言ってくれたら課題の詳細や商品の話でなく理由や背景を聞く
2024年7月15日
みなさんは、お客さんが課題や要望を言ってくれたときどうしていますか?
人材紹介の営業で、「営業社員を2名採用したい」
プロモーションの営業で、「問い合わせが少ないのでプロモーションを見直したい」
システムの営業で、「システムのリニューアルを考えている」
部品の営業で、「もっと強度の高い部品を探している」
受注獲得のチャンスと思い、お客さんの課題や要望の詳細を聞き、商品をアピールし、提案を獲得しよう。
しかし、予算を取ってもらえない、コンペで負ける・・・
人材紹介会社セントコーポレーションの営業担当Aさんが、設備機器商社のポータル商事を訪問していました。
お客さん
「営業社員を2名採用したいんです」
Aさん
「そうなんですか、当社からもぜひご紹介させてください」
「採用したいのはどういう人材ですか?」
お客さん
「30歳前後で法人営業を経験してきた人」
「うちは、営業社員が少ないので未経験者だと教育できないし、フットワークの軽い30歳前後までの人がいいんです」
Aさん
「性格とかヒューマンスキルはいかがですか?」
お客さん
「コミュケーション力が高くて、積極的に人間関係を作ろうとする人がいいです」
Aさん
「いつまでに採用したいとかご希望はありますか?」
お客さん
「3か月以内には採用して入社してもらいたいんです」
Aさん
「わかりました」
「ちなみに、他の人材紹介会社にもお声がけされていますか?」
お客さん
「このあと大手のヒューマンソリューション社 と中堅のアドバイスリーディング社と打ち合わせする予定になっています」
Aさんは、仕事内容や待遇など一通り質問した後に
「当社は若手の登録が多くて、私が直接求職者に面談して人物像を確認することができますので、御社に合う人材をご紹介できると思います」
お客さん
「そうなんですか、ぜひいい人材をご紹介ください」
Aさん
「わかりました、頑張りますのでよろしくお願いします」
といって会社に戻って紹介できる人材を探しました。
1週間後にポータル商事に合いそうな人材が3名いたので紹介し、お客さんに面接してもらいました。
ところが、全員不合格。
お客さんの要望どおり、30歳前後で法人営業経験も3年以上、コミュケーション力が高く、人間関係に積極的な人材なのに・・・
なぜ不合格だったのかお客さんに理由を聞いてみると
「アドバイスリーディング社から紹介してもらった人材が良かったので」
「アドバイスリーディングの方がいい人材だったんだ・・・当社もいい人材を紹介したけれど、しょうがない」
本当にしょうがなかったのでしょうか?
Aさんの営業の問題点を探してみてください。
ここで、アドバイスリーディングの営業担当者Bさんがどんな営業をしていたのかお話ししましょう。
お客さん
「営業社員を2名採用したいんです」
Bさん
「そうなんですか、当社からもぜひご紹介させてください」
「採用したいのはどういう人材ですか?」
お客さん
「30歳前後で法人営業を経験してきた人」
「うちは、営業社員が少ないので未経験者だと教育できないし、フットワークの軽い30歳前後までの人がいいんです」
「それと、コミュケーション力が高くて、積極的に人間関係を作ろうとする人がいいです」
・・・とここまではAさんのときと同じ、しかし
Bさん
「フットワークの軽い人材がいいって、なぜですか?担当顧客数が多いとかですか?」
お客さん
「それもあるけど、うちの営業は技術部との調整が多いんですよ」
Bさん
「そうなんですか、そうしたらフットワークの軽い人材の方がいいですね」
「なんで、そんなに調整が多いんですか?」
お客さん
「クライアントへの提案も1回で終わらずに技術部と調整して再提案するとか多いんですよ、だいたい3~4回ぐらい提案しているんじゃないかな」
Bさん
「そうなんですか、御社の提案は大変ですね」
「なんで、そんなに再提案が多いんですか?」
お客さん
「今まではカタログで製品を紹介して売っていたんですけれど、昨年から複数の設備機器や通信を組み合わせたシステム提案が多くなっているんです」
Bさん
「そうなんですか、やはりクライアントの製造業が自動化とかIoTとかを求めているからですか?」
お客さん
「そうなんです、だから一昨年から技術部を増員して製品売りからシステム提案するビジネスへと改革を進めているんです」
Bさん
「そうなんですか、そうしたらフットワークの軽さも必要かもしれないですが、これからは企画力の方が重要になるんじゃないですか?」
「御社の営業にはフットワークの軽い人が多いようなので、フットワークに関しては社内で指導でき るかもしれないですが、企画力を社内で指導しようとしても難しいと思いますので」
お客さん
「たしかに、そうですね」
「そうしたら法人営業経験があって企画力のある人材の方がいいですかね?」
Bさん
「そうですね、そうするとただの法人営業経験というよりも、広告会社やシステム会社出身の人で企画経験のある人材の方がいいと思います」
お客さん
「そうしましたら、広告会社やシステム会社出身で企画経験のある人材を紹介してもらえますか?」
Bさん
「わかりました、あとコミュニケーション力が高くて人間関係に積極的な人材を探してみます」
その後、Bさんは2名を紹介し、2名とも採用してもらえることになりました。
セントコーポレーションのAさんが紹介した人材は、お客さんの要望どおり、
「30歳前後、法人営業経験者、フットワークが軽い、コミュニケーション力が高い、人間関係に積極的」
アドバイスリーディングのBさんが紹介した人材は、
「30歳前後、広告会社やシステム会社出身で企画経験、コミュニケーション力が高い、人間関係に積極的」
なぜ、この差がうまれたのでしょうか?
「30歳前後で法人営業経験、フットワークが軽い、コミュケーション力が高い、積極的に人間関係を作ろうとする人」というお客さんの要望についてヒアリングするところまでは同じですが、その後・・・
Aさんは、
続けて要望の詳細や検討状況についてヒアリング
「いつまでに採用したいか」「他の人材紹介会社にも声をかけているか」
そして、商品紹介(アピール)し案件を獲得
「若手の登録が多い」「私が直接求職者に面談して人物像 を確認することができる」
Bさんは、
「なぜ?」を繰り返しながら要望の理由をヒアリング
「なぜ、フットワークの軽い人材がいいのか」「なぜ、調整が多いのか」「なぜ、再提案が多いのか」
その結果、要望の背景を把握
「昨年から複数の設備機器や通信を組み合わせたシステム提案が多くなっている」
「クライアントの製造業が自動化とかIoTを求めている」
「製品売りからシステム提案するビジネスへと改革を進めている」
その後、ヒアリングした要望の理由や背景に対して提案
「フットワークの軽さも必要かもしれないが、これからは企画力の方が重要になる」
Aさんは、要望や検討状況だけを聞いて商品紹介。
Bさんは、要望や検討状況以外に要望の理由や背景を聞いて提案。
お客さんの課題や要望は、その理由や背景から生まれてくるものです。
そして、その理由や背景によって、課題や要望は変わってくるものです。
要望だけを聞いて案件を獲得すると・・・
お客さんの要望が、適切なものなのか、検討してもらえるものなのか、予算を取ってもらえるものなのかわからない。
その要望は競合他社も同じく聞いている情報・・・同じ情報を聞いて提案しても差別化できない、勝てるか否かもわからない。
要望の理由や背景を把握すると・・・
お客さんの本当の課題を把握することができる。
お客さんの課題や要望の重要性を把握することができる。
競合他社よりも多くの情報を把握することができる。
適切な課題を把握することができ、そして適切な提案をすることができるのです。
そして、理由や背景の情報をより多く集めることで、競合他社が聞いていない情報を収集することができ差別化することもできるのです。
「フットワークの軽さも必要かもしれないが、これからは企画力の方が重要になる」
お客さんの要望は5つの階層で成り立っています。
①.経営課題や戦略
②.経営課題や戦略に対する現場の状況(仕事内容や体制、組織間の連携など)
③.現場の状況に対する課題(仕事内容や体制、組織間の連携などの課題)
④.要望(=人材紹介やプロモーション、システム、部品など売りたい商品に関する要望)
⑤.要望の詳細や検討状況
この中の①~③が要望の理由や背景です。
Aさんは、④の要望を聞いた後に⑤の要望の詳細や検討状況を聞きました。
Bさんは、④の要望を聞いた後に①~③の要望の理由や背景を聞きました。
適切な課題を把握し適切な提案をしたいなら「なぜ?」を繰り返しながら①~③の要望の理由や背景を聞くことが大切です。
お客さんが言ってくれた要望「フットワークが軽い人材」
「なぜ、フットワークが軽い人材が必要なのか?」・・・調整が多い(現場の状況に対する課題)
「なぜ、調整が多いのか?」・・・システム提案が多くなっている(現場の状況)
「なぜ、システム提案が多くなっているのか?」・・・システム提案するビジネスへと改革を進めている、製造業が自動化とかIoTを求めている(経営課題や戦略)
売上や受注獲得を目的とした営業はお客さんが要望を言ってくれると「案件を獲得したい、提案したい」という気持ちが強くなります。
そのため、すぐに案件を獲得しよう、提案しようと、要望の詳細や検討状況を聞こうとしてしまいます。
しかし、受注を獲得するためには、要望の詳細や検討状況を聞く前に、要望の理由や背景である経営課題や戦略、現場の状況、現場の状況に対する課題を把握しないといけないのです。
その方が適切な提案ができ、結果的に受注につながりやすいのです。
お客さんが課題を言ってくれたら、要望を言ってくれたら・・・、
急いですぐに案件を獲得しようと課題や要望の詳細や検討状況を聞かず、まずは課題や要望の理由や背景を聞きましょう。
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